2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜を構成する脂質分子の同定とその新規機能の解明
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21687016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池ノ内 順一 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10500051)
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Keywords | 脂質 / 上皮細胞 / 間葉細胞 / 質量分析 / 細胞膜 / 細胞接着 / スフィンゴミエリン / ライセニン |
Research Abstract |
本研究提案は、アピカル膜、バソラテラル膜や細胞接着装置など、明確に膜タンパク質の分布の異なる上皮細胞を例として、それぞれの膜領域を構成する脂質分子を比較することにより、細胞膜局所を構成する多様な脂質分子の機能に迫ることを目的としている。前年度までに確立したコロイド状シリカ粒子を用いた細胞膜の単離技術および液体クロマトグラフィ・質量分析による脂質分子種の解析を組み合わせることにより、上皮細胞と間葉細胞の脂質組成の変化やアピカル膜・バソラテラル膜の脂質組成の変化を行った。上皮細胞と間葉細胞の脂質分子種の比較においては、上皮細胞に特異的に存在する脂質分子種を同定した。更に今年度は、その代謝酵素の候補遺伝子の同定に成功した。現在、これらの酵素の遺伝子ノックダウンを行い、その表現型を解析している。また、アピカル膜とバソラテラル膜の脂質組成について、スフィンゴミエリンとホスファチジルコリンの分子種について詳細に検討を行い、論文に報告した。興味深いことに、スフィンゴミエリンに結合することが知られているシマミミズ由来の毒素ライセニンで上皮細胞を染色すると、アピカル膜のみを認識することがわかった。その理由として、ライセニンとスフィンゴミエリンの結合様式をリポソームを用いて検討したところ、ライセニンはスフィンゴミエリンが集合した状態のみを認識していることがわかった。このことから、アピカル膜とバソラテラル膜においては、スフィンゴミエリンはともに主要な脂質分子として存在するものの、その細胞膜上での分布様式に違いがあることが明らかになった。現在は、アピカル膜とバソラテラル膜におけるスフィンゴミエリンの分布様式の違いと上皮細胞極性の関わりについても解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である細胞膜脂質組成の同定と細胞膜における違いについて、今年度、論文報告を行った。また、上皮細胞と間葉細胞の脂質組成の比較についても、代謝酵素の絞り込みに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
上皮細胞特異的な脂質については、代謝酵素の遺伝子ノックダウンの表現型の解析を行う。また上皮細胞特異的な脂質分子種がどのような膜タンパク質と協働して機能しているかについて、候補となる膜タンパク質の同定や、リポソームを用いた試験管内再構成系の構築を行う。
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Research Products
(3 results)