2010 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス小胞放出ダイナミクス(確率・多重性・同期性)の制御分子基盤
Project/Area Number |
21700417
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
佐竹 伸一郎 生理学研究所, 生体情報研究系, 助教 (30360340)
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Keywords | 介在ニューロン / 顆粒細胞 / 興奮性シナプス後電流 / ペアパルス増強 / 減衰時定数 / Gタンパク質共役型受容体 / シナプス前抑制 |
Research Abstract |
昨年度、ラット小脳顆粒細胞軸索(上向性線維)の2回連続刺激(ペアパルス刺激)に伴い、分子層介在ニューロン(籠細胞、星状細胞)から記録される興奮性シナプス後電流(EPSC)において、2回目EPSCの振幅値(peak amplitude)と減衰時定数(decay-time constant,τ)が一過性に増大することを報告した(ペアパルス増強)。薬理学実験の結果から、(1)振幅増大は、シナプス小胞の放出確率と放出多重性が増大したこと、(2)減衰時間増大は、放出多重性増大に伴い大量に放出された神経伝達物質(グルタミン酸)がシナプス外領域に拡散・蓄積したことにより惹起されたと推定している。また、こうした発現メカニズムは、コンピュータシミュレーションを用いたキネティクス解析によっても強く支持された。今年度、ペアパルス増強の分子基盤を追究する過程で、G_<i/o>共役型受容体が仲介するシナプス前抑制に多様性があることを発見した。第1のタイプにはGABA_B受容体、代謝型グルタミン酸受容体(グループ3)、アデノシンA1受容体などが属し、受容体の活性化に伴いEPSCの振幅が減弱するとともに減衰時間のペアパルス増強は消失した。一方、第2のタイプにはカンナビノイドCB1受容体が属し、減衰時間のペアパルス増強に影響することなくEPSC振幅を減弱させた。G_<i/o>共役型受容体が仲介するシナプス前抑制には、複数の発現メカニズムが存在することを示唆している。シナプス前抑制における多様性とシナプス小胞放出確率/放出多重性制御機構の分子的連関を明らかにするため、現在も引き続き薬理学的・組織学的手法を用いた検討を行っている。
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