2009 Fiscal Year Annual Research Report
力学環境に適応する血管壁リモデリングメカニズムの工学的モデルの構築
Project/Area Number |
21700457
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂元 尚哉 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (20361115)
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Keywords | 生物・生体工学 / 生物物理 / 細胞・組織 / 力学刺激 / リモデリング / 血管内皮細胞 / 細胞外基質分解酵素 |
Research Abstract |
本年度は力学環境と血管内皮細胞機能の定量的な関係解明を目的として,流れ刺激負荷実験系の構築とせん断応力に対する細胞機能応答の解析を行った. 1.せん断応力に対する内皮細胞のMMP産生変化 内皮細胞に流れ刺激負荷を行い細胞外基質分解酵素であるMMPと抑制因子であるTIMPの産生変化を調べた.生理的な値である2Pから7Paまでのせん断応力を内皮細胞に24時間負荷した.その後培養液中に含まれるMMPおよびTIMP量をザイモグラフィー法およびドットブロッティング法にて評価した.MMP-2,MMP-9およびMMP-1産生量,またTIMP-1産生量もせん断応力の大きさにともない有意な増加を示した.血管壁リモデリングに対するそれぞれのMMPの役割をさらに検討するため,2Paにおける値で規格化しMMPとTIMP-1の比(MMP/TIMP-1)を評価した.MMP-1/TIMP-1は静置培養および7Pa環境においても2Pa環境とほぼ等しい値を示した.MMP-9/TIMP-1はせん断応力値の増加とともに増加傾向を示した.一方,MMP-2/TIMP-1は静置培養時の方が高く,7Pa環境で低くなる傾向が得られた.せん断応力環境に応じて血管壁リモデリングのおける各MMPの働きが異なることが示唆された. 2.せん断応力勾配負荷実験系の構築 血管壁のリモデリングに対してせん断応力の大きさだけでなく,空間的勾配も重要な役割を持つことが近年注目され始めた.そこで空間的せん断応力勾配を変化させたせん断応力負荷実験系の構築を行った.T型の分岐部を有するフローチャンバを設計し,分岐部の形状を変化させることで様々な大きさのせん断応力勾配を内皮細胞に負荷することを可能とした.設計に基づいて作製したフローチャンバを用いて,内皮細胞にせん断応力勾配を負荷した結果,勾配のないせん断応力に対しては流れ方向には配向性を示す内皮細胞が,勾配のあるせん断応力環境下では配向性を示さなかった.内皮細胞はせん断応力の大きさだけでなく,せん断応力勾配の大きさも感知していることが明らかになった.
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Research Products
(7 results)