2009 Fiscal Year Annual Research Report
褥瘡発生の分子機構の解明と物理療法による予防への取り組み
Project/Area Number |
21700533
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒瀬 智之 Hiroshima University, 大学院・保健学研究科, 助教 (20363054)
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Keywords | 褥瘡 / 圧迫 / ネオジム磁石 / iNOS / アロプリノール / アミノグアニジン / エダラボン |
Research Abstract |
ラットの腹壁を磁石で挟む褥瘡モデルにおいて、炎症反応に関連する遺伝子発現が褥瘡の発生に関与することがわかっている(平成19~20年度科学研究費 課題番号19700435)。Wistarラットの腹壁をネオジム磁石で挟んで、100mmHgで4時間圧迫し、圧迫開始から12時間、1、3日後に腹壁を採取した。炎症性サイトカインの発現と関係のあるNF-κBや、低酸素状態で増加するHIF-1α、一酸化窒素を合成して酸化ストレスを起こすNOS(nNOS、iNOS、nNOS)の発現をリアルタイムPCRで調べ、褥瘡への関与を調べた。NF-κBのmRNAは圧迫開始から12時間、1、3日後のいずれにおいても変化していなかった。圧迫後の炎症性サイトカインの増加は、他の転写調節因子の影響が考えられる。HIF-1αのmRNAも変化が確認できず、これは褥瘡発生に虚血による低酸素の影響が少ないことを示唆する。nNOSやeNOSは減少し、iNOSは著しく増加していた。iNOSの増加は過剰なNOの産生と、それによる局所での酸化ストレスの発生を示唆する。酸化ストレスは、炎症性サイトカインの産生を刺激するだけでなく、組織を破壊する働きがある。 酸化ストレスの発生にはスーパーオキシドラジカル(O_2^-・)、NO、ヒドロキシルラジカル(・OH)が主に関わる。これらを阻害する薬物(アロプリノール、アミノグアニジン、エダラボンのいずれか)を腹腔内投与してから、同様に腹壁を圧迫した。すべての阻害物質で、皮膚や筋の損傷がわずかに減少し、iNOSのmRNA発現量は減少していた。酸化ストレスを抑制することで、褥瘡の発生を部分的に抑えることができると考える。
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