2010 Fiscal Year Annual Research Report
褥瘡発生の分子機構の解明と物理療法による予防への取り組み
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21700533
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒瀬 智之 広島大学, 大学院・保健学研究科, 助教 (20363054)
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Keywords | 褥瘡 / 発生機序 / 治癒過程 / 圧迫 / ネオジム磁石 / 炎症性サイトカイン |
Research Abstract |
ラットの腹壁を磁石で挟む褥瘡モデルにおいて、炎症反応に関連する遺伝子発現が褥瘡の発生に関与することがわかっている(平成19~20年度科学研究費課題番号19700435)。Wistarラットの腹壁をネオジム磁石で挟んで、100mmHgで4時間の圧迫を毎日繰り返して5回圧迫した。大部分のラットで、圧迫開始翌日から皮膚の浮腫と発赤がみられた。5回の圧迫後、傷害部は徐々に小さくなり、圧迫部のほぼ全体が変色して痂皮で覆われた。痂皮が剥がれる場合は深い潰瘍ができ、潰瘍は徐々に狭まって約3週後にほとんど治癒した。試料採取時には、磁石は腹膜腔内を自由に移動できる状態だった。光学顕微鏡で観察すると、圧迫後の皮膚と皮下組織が著しく厚くなり、浸潤細胞が圧迫部位に集まっていた。浸潤細胞は筋層にも著しく集まり、壊死した筋線維を貪食していた。最後の圧迫から4、8日後まで皮膚と皮下組織は厚く、浸潤細胞が多数みられた。12日後以降には、皮膚と皮下組織の厚みが徐々に減り、再生筋線維などの修復像がみられた。最後の圧迫から2、4日後のmRNAを調べると、IL-1βなどの炎症性サイトカインが著しく増加していた。浮腫、発赤、痂皮や皮膚の欠損など褥瘡の臨床症状とその後の治癒過程を肉眼的・顕微鏡的に観察できるモデルが作製できた。これは、褥瘡発生機序の追求や治療法の開発に有用である。また、炎症性サイトカインが圧迫部で過剰に発現しており、褥瘡発生への関与を示唆するとともに、治療のターゲットになりうると考える。
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