2010 Fiscal Year Annual Research Report
注意配分能力を考慮した多重課題トレーニングは高齢者の転倒予防に有効か?
Project/Area Number |
21700542
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
牧迫 飛雄馬 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 在宅医療・自立支援開発部, 流動研究員 (70510303)
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Keywords | 姿勢 / 高齢者 / 筋電図 / 注意配分 / 反応時間 / 身体動揺 |
Research Abstract |
本研究では,転倒の前駆状態とされるつまずきの発生と注意配分を要する多重課題下での反応時間との関連を明らかにすることを目的とした.地域在住高齢者19名(男性11名,女性8名,平均年齢70.2歳)を対象として,立位での異なる課題条件下で反応時間(reaction time : RT)を計測した.また,一年後に質問紙調査を実施し,一年間のつまずき経験の有無を聴取した.課題条件は,砂の入ったグラスを保持した不安定マット上での立位(control task : CT),水の入ったグラスを保持した不安定マット上立位(dual-motor task : DMT),砂の入ったグラスを保持して想起課題を課せられた不安定マット上立位(dual-cognitive task : DCT)とした.RT課題では,刺激音に対してなるべく早く保持したボタンを押すまでの時間(msec)を計測し,CTに対するDMTとDCTのRT変化率を算出した.測定後の一年間でつまずきを経験した対象者は9名(47.4%)であり,つまずきを経験しなかった10名(52.6%)と年齢の差異は認めなかった.一方,つまずき経験別に一年前の多重課題条件下でのRT変化率を比較すると,DMTにおけるRT変化率ではつまずきの経験の有無による有意差は認められなかったのに対して,DCTにおけるRT変化率はつまずき経験者で有意に増加を認めた(p<0.05)。つまり,認知課題を付加した際の注意配分能力と単純課題下の注意配分能力との差が大きかった高齢者が,その後の一年間につまずきを経験する割合が多い結果であった.このことから,認知課題を付加した際の反応時間遅延率、すなわち注意配分能力の低下が,将来のつまずき発生の有用な指標になる可能性が示唆された.
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