2010 Fiscal Year Annual Research Report
廃用性萎縮筋に対する熱刺激を用いた新たな筋傷害の予防方法の開発に関する実験的研究
Project/Area Number |
21700556
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
坂野 裕洋 日本福祉大学, 健康科学部, 助教 (00351205)
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Keywords | 筋萎縮 / 筋傷害 / 熱刺激 / ギプス固定 / Heat shock protein |
Research Abstract |
廃用性筋萎縮の治療では,運動負荷によって起こる筋傷害を予防しつつ,萎縮の早期回復を図ることが望ましい.本年度は,熱刺激によって骨格筋内に発現するストレスタンパク質であるHeat shock protein(HSP)70に着目し,廃用性萎縮筋に対する安全かつ効果的な筋萎縮治療方法と新たな筋傷害の予防方法の開発を目的に以下の実験を行った.【目的】ギプス固定後の再荷重で引き起こされる下腿三頭筋の筋損傷に対して,再荷重2日前よりプレコンディショニングとして熱刺激を48時間置毎に繰り返し行うことが筋傷害の発生におよぼす影響を検討した.【方法】ラットを通常飼育の群と通常飼育にて熱刺激のみを行う群,両側足関節を4週間ギプス固定する実験群に振り分け,実験群はさらにギプス固定終了の2日前より48時間毎に熱刺激を行う群と熱刺激は行わず同様に再荷重を開始する群に分けた.検索時期は再荷重開始から0,3,7日目とし,ヒラメ筋を材料にHsp70含有量と壊死線維の発生頻度,ならびに筋線維横断面積の分布状況を比較した.【結果および考察】ギプス固定後の再荷重で起こる筋傷害は,再荷重から3日目に最も顕著となり,その後の経過は回復する傾向にあった.一方,再荷重開始の2日前より48時間毎に繰り返し熱刺激を行うと,再荷重後のラットヒラメ筋内にHsp70が恒常的に発現し,再荷重から3日目の筋傷害が軽減されることを確認した.しかし,その後の経過をみると,再荷重から5日目に新たな筋傷害の発生が認められた.このことから,ギプス固定後に48時間毎に繰り返し行う熱刺激では,再荷重後に繰り返し与えられる伸張負荷などのストレスに対する,長期的な筋傷害の予防効果は得られない可能性が考えられた.また,再荷重前の熱刺激による筋傷害の予防効果は,HSP70以外の要因が影響している可能性も示唆された.
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