Research Abstract |
本研究は,教育実習前の大学における効果的なカリキュラムを検討・実践すると同時に,教育現場が大学教育に求めるニーズを把握し,より実践的で一貫性のある指導体制を検討することを目的として,2年間行った. 研究2年目の今年度は,1年目の模擬授業の実践方法(マイクロティーチング)を踏襲しつつ,(1)2回実施した模擬授業の実態と授業後の「振り返りカード評価点」の分析に加え,(2)模擬授業後の学生達のレポートを分類し,彼らが何に困難を感じたのかについて現状を捉えた.また(3)附属学校で行われた教育実習中の実践と実習簿の分析,(4)授業中の力量形成の実態と,ICレコーダーにより録音した指導教官との振り返り内容(指導教官とのコンセンサス有)の形態素分析を行った.結果,(1)では全ての実習生の相互作用行動の頻度が2回目に増加し,評価点の分析からは「学習課題の分かりやすさ(5.86→6.10)」,「提示課題の厳選(5.58→5.88)」,「課題提示の時間(5.66→5.95)」について有意な向上が認められた(p<0.05).(2)で,困難だったのは「図示を行う課題提示の仕方:82%」,「言葉で情報を伝える課題提示の仕方:71%」,「授業の展開の難しさ:59%」,「運動学習中の言葉かけ:53%」とされた.(3)では,マネジメント時間の減少,適切な相互作用行動の増加という肯定的な結果が示された.実習簿のカテゴリー分析では「教材研究の不足」についての内容が最も多く,大学での実習前のカリキュラムで教材についての知識をより多く提供する必要性が示唆された.(4)について,1事例を特に挙げると,4回以上の出現頻度を示した形態素が1回目には42,2回目には23,3回目には8,4回目には13,5回目には24,6回目には13出現した.具体的には,教授技術や教材についてなど内容が多岐にわたっていた1回目から,指導教官の指導内容により焦点が定まっていき,教材のねらいにむけた内容に次第に整理されている様子が明らかになった.
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