2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700696
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
森島 真幸 大分大学, 医学部, 助教 (40437934)
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Keywords | 自発運動 / 運動意欲 / モノアミン / 心臓自律神経活動 |
Research Abstract |
本研究は、生まれつき自発運動への欲求が正常Wistarラットよりも強い自然発症の高運動性モデルラットSPORTSを実験のツールとして用いて、運動意欲の制御に関わる脳内分子基盤の解明を目指すと同時に、心臓自律神経活動への影響を解析することにより、神経性因子を介した自発運動の制御と心機能の連関作用を生理学的に実証することを目的とした。本事業により、以下のことを見出した。 1高運動性モデルラットSPORTSの心電図解析の結果、安静飼育状態の心拍数は活動期、非活動期ともに対照Wistarラットに比べ高値を示し、心拍数の日内変動も大きいことが判明した。2心拍変動解析の結果、SPORTSラットの心臓自律神経活動は、安静飼育状態の活動期にL/H比(交感神経活動の指標)が顕著に増加していたが、自発運動によりL/H比は是正された。一方、対照Wistarラットにおいては、自発運動によりL/H比の増加し、交感神経活動の亢進が推察された。3対照ラットにモノアミン酸化酵素A(MAOA)阻害薬を投与し脳海馬モノアミン量を定量したところ、SPORTSラットと同程度に海馬ノルエピネフリン放出量が増加し、自発運動量や心拍数の増加が認められた。また、心拍変動解析の結果、MAOA阻害薬投与ラットでは、SPORTSラットと同様に心拍数の増加の認められた夜間活動時間帯で交感神経活動指標であるL/H比が有意に上昇していることが判明した。4対照ラット脳海馬に、脳灌流用プローブを用いて各種薬剤(α遮断薬、β遮断薬)を拡散投与させた結果、α1遮断薬であるprazosin、及びα2遮断薬yohimbine投与により自発運動量の顕著な抑制が認められた。β遮断薬投与はラットの自発運動量に影響を及ぼさなかった。5ΣΠOPTΣラットの心臓は顕著に肥大していることがわかったが、病的心肥大マーカー分子(ANΠ,BNΠ)の発現の上昇は認められなかった。6SPORTSラットの単離心筋において、生理的心肥大に関わる細胞内シグナル分子(Akt,PI3K,CREB)のリン酸化が亢進しており、これにより心筋L型カルシウムイオンチャネル(Cav1,2)の発現が顕著に増大していることが判明した。ラット心筋におけるこれらの因子の発現増加は、心血管に対し保護作用を示す可能性が示唆された。本事業により、自発運動を引き起こす因子(脳内ノルエピネフリン)が生体にとって質的良好な運動基盤分子である可能性が生理学実験により一部証明することができた。本研究の成果は、運動療法を必要とする心疾患患者だけでなく健康な個人に対しても、運動の効果を最大限に発揮できるシステムの開発に貢献することが期待される。
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Research Products
(2 results)