2010 Fiscal Year Annual Research Report
ホルムアルデヒドフリーのナイロン繊維の黄変防止技術の開発
Project/Area Number |
21700736
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Research Institution | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
Principal Investigator |
大江 猛 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 研究員 (10416315)
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Keywords | ナイロン繊維 / 糖 / 黄変防止 / ホルムアルデヒド / シックハウス症候群 / メラノイジン反応 / マイクロ波加熱 |
Research Abstract |
前年度の研究成果から、ナイロン繊維と還元糖を水中で反応させることによって、バニリンなどの芳香族アルデヒドに対する黄変防止効果が得られた。しかしながら、有機溶媒を用いた系と比較して、反応速度の低下や副反応による繊維自身の変色などの新たな問題点を残している。そこで、本年度では、還元糖とナイロン繊維との反応を、還元漂白剤であるハイドロサルファイトナトリウムを含む水溶液中で行った。さらに、マイクロ波照射下で同様の実験を行い、反応速度および黄変防止効果への影響についても併せて検討した。 はじめに、グルコースなどの還元糖を水中で反応させたところ、還元剤を添加していない系とは異なり、還元糖とナイロン繊維との間でメラノイジンによる着色が殆ど認められなかった。特に、還元糖としてマンノースを用いた場合、未加工布のナイロン繊維の白度を維持することができた。還元剤存在下で還元糖とナイロン繊維が反応していない可能性を考慮して、反応後のナイロン布に対してバニリンによる黄変テストを行ったところ、反応速度が低いものの、十分な黄変防止効果が得られた。さらに、得られたナイロン繊維に対して各種繊維物性を評価したところ、引張強度では強度の低下は殆ど認められず、10~20%程度の吸湿性の増加が確認できた。最後に、マイクロ波照射下でナイロン繊維と還元糖との反応を行ったところ、マイクロ波特有の急速な昇温効果は認められたが、これまでに検討した通常加熱と比較してメラノイジンの生成の抑制や反応時間の短縮は認められなかった。この原因については明らかではないが、本反応系ではマイクロ波の大部分が溶媒である水に吸収されており、マイクロ波による基質の部分加熱の効果が極めて小さかったと考えられる。以上、本研究では、還元漂白剤を添加することによって水系での繊維の自己着色を防ぎながらナイロン繊維に黄変防止機能を付与することができた。
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Research Products
(4 results)