2009 Fiscal Year Annual Research Report
食生活の偏りが消化器疾患関連遺伝子の発現に及ぼす影響と腸内菌叢の関わりについて
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21700757
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
有持 秀喜 The University of Tokushima, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (30311822)
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Keywords | 腸疾患 / 大腸癌 / 腸内菌 / Bacteroides属 / マトリックスメタロプロテアーゼ |
Research Abstract |
現在の日本では食生活が従来の日本型からアメリカ型に移行しつつあり、脂肪、蔗糖の摂取過多、野菜不足による食物繊維の不足など、いわゆる食生活の偏り・乱れが起きている。近年、アレルギー疾患や過敏性大腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸癌などの腸疾患が増加しているが、食生活の乱れによる腸内環境の悪化や腸内菌叢の変化が要因の一つであると考えられる。宿主細胞は病原体関連分子パターン(PAMPs)と呼ばれる微生物固有の構造を認識するのに必要な受容体(PRR)を持っており、腸管上皮細胞はPRRを介して付着した細菌とクロストークを行い、遺伝子発現の調整などを行っている。しかし、腸内菌叢を構成する腸内菌は、500種、10兆個も存在しているため、腸内菌が宿主に与える影響は完全に解明されていない。そこで、腸内常在菌の主要な菌種であるBacteroides属がヒト大腸由来上皮細胞に対して、腸管の再構成、血管新生、免疫細胞の浸潤、がん細胞の転移など様々な生理学的、病理学的現象に重要な役割を果たすマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現に与える影響を調べた。その結果、B.vulgatusおよびB.thetaiotaomicronはヒト大腸癌細胞であるHT-29およびHCT116に対してMMP-2の発現を誘導するが、B.fragilisは誘導しないことが明らかとなった。B.vulgatusおよびB.thetaiotaomicronによるMMP-2誘導効果はこれらの菌体の無細胞抽出物でも見られ、また加熱処理によってその効果が失われた。また、菌体が直接細胞に接触することが必須であることから、菌体のタンパク質成分が細胞に直接働きかけることによって起こると考えられた。これらの結果は腸管上皮細胞に接着した腸内菌の種類によって宿主細胞の遺伝子発現パターンが変化することを示唆している。
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Research Products
(1 results)