2010 Fiscal Year Annual Research Report
食生活の偏りが消化器疾患関連遺伝子の発現に及ぼす影響と腸内菌叢の関わりについて
Project/Area Number |
21700757
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
有持 秀喜 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (30311822)
|
Keywords | 腸内菌 / 大腸癌細胞 / サイトカイン |
Research Abstract |
食生活の乱れ・偏りは腸内菌叢の変化を引き起こす。その結果、腸内菌が付着することによって誘導される腸管上皮細胞内の遺伝子発現パターンに変化がおこり、アレルギー疾患や潰瘍性大腸炎などの腸疾患の発症・増悪に結びつくと考えられている。しかし、食生活の乱れによる腸内歯叢の変動は複雑であり、健康への悪影響に関する詳細な機序は未解明である。そこで、付着した腸内菌の種類によって腸管上皮細胞によるサイトカインの発現パターンがどのように変化するのかを明らかにするため、腸内優勢菌であるBacteroides属3菌種8菌株をヒト大腸癌細胞株であるHT29またはHCT116に付着させ、14時間後の培養上清中のサイトカイン量をELISA法を用いて測定した。その結果、B.fragilisを HT29細胞に接触させた場合、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-6、抗炎症性サイトカインであるIL-10の誘導が見られ、逆にTGF-β1は産生が抑制された。TGF-β1の産生抑制はHCT116細胞でも見られた。HT29細胞にB.vulgatusを接触させたときにはIL-10の産生誘導が見られ、HCT116細胞に接触させた場合はIL-10、TNF-α、IL-6の産生誘導、およびTGF-β1の産生抑制が観察された。B.thetaiotaomironをHT29細胞に接触させた場合、TNF-α、IL-10の誘導、およびTGF-β1の抑制が観察されたが、HCT116細胞に対しては影響を与えなかった。また、同一菌種であっても菌株によってサイトカイン発現に対する影響が大きく異なった。以上の結果より、腸内菌と付着する細胞の組み合わせによって、疾患の発症・増悪に関与するサイトカインの発現が大きく変動することが明らかとなり、腸内菌による上皮細胞のサイトカイン産生は重要であうと思われるが非常に複雑であることがわかった。
|