2010 Fiscal Year Annual Research Report
鉄欠乏性貧血における耐糖能低下とその機構に関する研究
Project/Area Number |
21700777
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Research Institution | Jin-ai University |
Principal Investigator |
池田 涼子 仁愛大学, 人間生活学部, 講師 (80352805)
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Keywords | 食と栄養 / 基礎栄養学 / 鉄欠乏性貧血 / 耐糖能異常 / アディポカイン |
Research Abstract |
鉄欠乏は、我が国において比較的頻度の高い栄養素欠乏である。過去の研究で鉄欠乏食投与ラットとII型糖尿病モデルラットを比較した結果、鉄欠乏ラットの血中グルコース濃度が、GKラットと同程度まで上昇することを観察した。これより本研究では、インスリン抵抗性の惹起に関連するアディポカイン群の変動を介して、鉄欠乏が生活習慣病の危険因子となる可能性について検討した。 昨年度の研究において、鉄欠乏食投与ラットの血糖値上昇および高インスリン血症から、食餌誘導性鉄欠乏によるインスリン抵抗性の促進を確認した。鉄欠乏では、肝臓のビタミンA放出障害による代謝性のビタミンA欠乏状態を呈することが知られている。また、ビタミンAとその輸送担体がエネルギー代謝に影響を及ぼすことから、本年度は鉄欠乏ラットと食餌性ビタミンA欠乏ラットの血中アディポサイトカインの変動を比較し、鉄欠乏により誘導されるインスリン抵抗性の機構について検討を行った。鉄欠乏ラットでは、インスリン抵抗性促進因子であるレジスチンとTNFaの増加およびインスリン感受性促進因子であるレプチンとアディポネクチンの低下を観察した。これらは、鉄欠乏による脂質代謝の亢進が要因であり、特にTNFaの増加は、生 体内脂質過酸化の亢進を反映したものと考えられた。ビタミンA欠乏ラットでは、レジスチンとTNFαの増加傾向およびレプチンの低下が観察されたが、鉄欠乏群ほどの顕著な差ではなかった。インスリン抵抗性促進因子であるRBP4は、ビタミンA欠乏状態を反映して、両群とも低値を示した。 以上より、鉄欠乏およびビタミンA欠乏で、ともにインスリン抵抗性に関連してアディポカインの変動がみられたが、その項目は完全には一致せず、それぞれが独自の要因により耐糖能異常を呈するものと考えられた。本研究から、糖尿病の栄養管理において、ビタミンAおよび鉄栄養の充足が重要であることが示唆された。
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Research Products
(1 results)