Research Abstract |
本年度は,前年度に得た基礎データを元に,1)信念の強度を測定するトピックの抽出,および2)信念の強度に影響すると思われる認知判断傾向尺度について,より簡便な測定ができるよう質問項目の取捨選択を実施した。その結果,1)については16個のトピックを,2)については5尺度10因子からなる尺度群のそれぞれについて5項目ずつ,計50項目からなる認知判断傾向測定尺度を構成することができた。また,フェースシート項目についても,予備調査で不備があったと思われる点を修正し,最終的な調査票を作成した。 この調査票を用いて,159名の大学生を対象とした調査を行い,フェースシート項目,認知判断傾向尺度と,16個の科学および疑似科学的信念の強度との関係を分析検討した。まず,フェースシート項目は,文系-理系志向性,TVの視聴頻度,文字メディアへの接触頻度,ネットへの接触頻度の4つに集約することができた。認知判断傾向尺度は,当初想定した10因子構造が確認された。疑似科学的トピックは,大別して「健康」に関連したものと,「超自然現象」に関連したものの2つに分類することができた。超自然現象に関する主張は概ね妥当ではなく,科学的根拠はないと評価されていたが,健康に関連するものは,妥当性,根拠の十分さの評価が科学的な話題と同様に高い傾向にあった。 文系-理系志向性は,一部のトピックで妥当性および根拠の評価に対して有意なパス係数を示しており,理系科目の教育が一定の効果を挙げていることが伺える。また,「秩序への選好」因子が一部のトピックで有意なパス係数を示しており,安定性を求める傾向が「わかったつもり」という状態を作ることに寄与していることを示唆している。他にも,決断力,および熟慮性因子の直接的効果,探求心,および論理的思考への自覚因子のメディアへの接触を介した間接的効果などが観察された。
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