2009 Fiscal Year Annual Research Report
亜酸化窒素発生における土壌糸状菌の生態学的役割の解明
Project/Area Number |
21710004
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐藤 嘉則 Ibaraki University, 地球変動適応科学研究機関, 科学技術振興研究員 (50466645)
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Keywords | 亜酸化窒素 / 土壌糸状菌 / Mortierella elongata / Cheilymenia stercorea |
Research Abstract |
本研究は、温室効果ガスである亜酸化窒素(以下、N_2Oと省略)を生成する土壌糸状菌のデータベース構築を行うものであり、窒素循環に果たす糸状菌の生態学的役割を再検証することを目的としている。本年度は、N_2O生成活性を有する糸状菌の分離と同定についての解析を行った。分離源として、茨城大学フィールドサイエンス教育研究センター陸稲連作体系無施肥区土壌(以下、FSCと省略)および九州沖縄農業研究センターの家畜スラリー連用土壌(以下、NARCと省略)を供試した。FSC試料では、糸状菌株を54株分離し、同定を行ったところ、Mortierella elongataに近縁な種が40%と多く検出され、N_2O生成活性を測定した結果、分離株の77%が硝酸からのN_2O生成活性を示した。一方、NARC試料では糸状菌を46株分離し、同定を行ったところ、Cheilymenia stercoreaに近縁な種が63%と多く検出され、N_2O生成活性では、分離株の44%が硝酸からのN_2O生成を示した。亜硝酸からはほぼ全ての分離株がN_2O生成活性を有していた。また、種の違いによって活性強度が大きく異なることが明らかとなった。具体的には、Hypocreales目に属するMetarhizium, Myrotheium,Clonostachys, Trichoderma, Fusarium属菌に近縁な分離株から高いN_2O生成活性が認められた。 本年度の研究成果から、畑地土壌におけるN_2O生成には多種類の糸状菌が関わっていることが明らかとなり、N_2O生成糸状菌のデータベース構築に向けた基盤的知見を提供することができた。さらに、N_2O生成活性は種の違いによって大きく異なることから、N_2O生成活性の高い糸状菌が優占しないような土壌管理技術への展開に有意な結果を得ることができた。
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