Research Abstract |
外来生物は在来生物と競合し,植生を変化させ,生物多様性の喪失や農産物害を引き起こす.また,外来生物の侵入による植生の変化が,森林火災など自然災害リスクの可能性を高める場合がある.このように外来生物の侵入・定着・拡散は様々な生態的・経済的損失をもたらす.本研究の目的は,様々な環境及び経済的被害を引き起こしている外来生物の効率的管理について理解を深めるため,動的・空間的な外来生物の拡散メカニズムに関する知見と数理モデルを結合し,数値シミュレーションを行うことである.そして,効率的・効果的な管理空間配置の特徴を明らかにすることを目指す.本年度は,昨年度収集した外来種の空間分散プロセスに関する文献をもとに,外来種の拡散メカニズムをセルオートマンで再現し,様々な管理の空間配置が外来種の拡散にどのような影響を及ぼすかシミュレーション分析を行った.具体的には,外来種として,マメ科の落葉高木を取り扱い,拡散制御の管理の様々な時空間パターン配置が,この外来種の拡散に及ぼす影響を,時空間的シミュレーションモデルにより定量化し,比較分析した.本研究結果から,拡散制御のための最適な管理帯の幅は,その管理の結果生じると予想される外来種の拡散程度と,幅の大きさによる管理費用の違いを考慮し,比較することが経済効率性の観点から重要であることが示唆された.また,外来種リスク軽減のための最適管理空間配置モデルの基盤となる空間最適化モデルを構築した.今後,効率的な外来種管理に向けて,管理幅だけでなく,より一般的な管理の空間構造について調べるうえで,ここで構築した最適化モデルとシミュレーションモデルの結合は非常に有効な分析ツールとなると考えられる.
|