2011 Fiscal Year Annual Research Report
Foci on FISH法を用いた染色体転座によるATM持続的活性化の証明
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21710061
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山内 基弘 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (60437910)
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Keywords | 染色体転座 / γ-H2AX / ATM / 細胞周期チェックポイント / DNA二重鎖切断 |
Research Abstract |
本研究の目的は、従来不可能であった染色体FISHとリン酸化ヒストンH2AX(γ-H2AX)の蛍光免疫染色を組み合わせる手法(Foci on FISH法)を確立し、DNA二重鎖切断末端だけではなく、染色体転座の融合部位においても、H2AXのリン酸化、すなわちATMの活性化が持続していることを証明することであった。平成21年度にはFoci on FISH法を確立し、平成22年度には本法を用いてリン酸化H2AXフォーカスが染色体転座の一種である二動原体染色体上に形成されているとと、すなわち転座融合部位においてATMの活性化が持続していることを明らかにした。平成23年度はATM依存的な転座頻度抑制機構についてさらに詳細な検討を行った。ATM阻害およびp53発現抑制はどちらも転座頻度を上昇させるが、その上昇の程度はATM阻害>p53発現抑制であったため、ATMはp53依存的な細胞周期チェックポイント以外の機能を介しても転座頻度の抑制に貢献していることが考えられた。そこでp53 shRNAおよびChk1/2阻害剤により全ての細胞周期チェックポイントがかからない条件下でATM阻害剤の効果を調べた結果、ATM阻害により放射線照射後の二動原体染色体の頻度が上昇した。これまでの報告からATMはDNA-PK依存的な分子経路の中でDNA二重鎖切断修復に働いていることが分かっているため、転座形成抑制においてもDNA-PKと協調して働いているかどうかを調べた。まず細胞にDNA-PK阻害剤を処理したところ、二動原体染色体頻度は非処理群と比べ、約4倍に増加した。次にDNA-PK阻害剤に加えてATM阻害剤も処理した群とDNA-PK阻害剤単独処理群とで二動原体染色体頻度を比較したところ、両群に差は見られなかった。この結果はATMがDNA-PKと同じ経路で染色体転座の頻度を抑制していることを示唆する。本研究の成果により、染色体転座部位においてはATMが持続的に活性化してヒストンH2AXやp53にリン酸化シグナルを伝達し、細胞周期チェックポイントを活性化して転座を持つ細胞の増殖を抑制すること、またチェックポイント非依存的にもDNA-PKと協調して転座頻度を抑制していることが明らかになった。
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