Research Abstract |
本研究は,火力発電所などの排ガス中から二酸化炭素(CO_2)を分離する技術として,多孔質中空糸膜を用いた気液接触による化学吸収法を利用した,吸収-放散システムの高効率化を目指したものである。化学吸収法においては,CO_2を吸収した吸収液からCO_2を放散させる時の熱負荷が大きく,省エネルギー化が課題となっている。 一般的に,吸収反応は発熱反応であり,吸収温度の高温化は平衡論的には吸収に不利になると予想される。一方,吸収温度の高温化は放散時の熱負荷の低減につながると期待される。そこで,ポリエチレンの多孔質中空糸膜を使用し,吸収液としてモノエタノールアミン水溶液を用い,CO_2:N_2=1:9の混合ガスからのCO_2吸収実験を温度を変えて行った結果,ガスと液を向流接触させた場合では,70℃までの温度上昇に伴いCO_2吸収速度が増大した。これにより,同じCO_2吸収率を達成するために必要な吸収液量を大幅に削減でき,吸収液循環動力,放散時の加熱量の削減が可能であることを見出した。加えて,加熱の温度幅の縮小による熱負荷の低減も期待でき,二重の効果により省エネルギー化できる。また,温度と吸収速度の関係は,ガスと液の流れの配置や各流速,吸収液中のCO_2ローディングが影響を及ぼすことを明らかにし,省エネルギーのための最適な条件が存在することが明らかとなった。 また,吸収液の再生方法として従来の加熱方式ではなく,圧力操作によるCO_2放散の可能性を検討した。アルミナやジルコニアの無機多孔質中空糸膜を用いて,予めCO_2を吸収させた吸収液を中空糸内側に流し,外側を減圧することによりCO_2を放散させた。減圧側の圧力低下に伴い放散現象が変化し,5kPa程度では,液相からCO_2の泡が発生する発泡現象に加え,水の飽和蒸気圧以下に低下することによる水蒸気が発生し,CO_2放散速度が著しく増大することを明らかにした。また,膜の細孔径が小さいほど発泡による放散速度が増大することを明らかにした。
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