2009 Fiscal Year Annual Research Report
動物における乾燥耐性・極限環境耐性機構のプロテオーム解析
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21710223
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國枝 武和 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (10463879)
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Keywords | プロテオーム / 蛋白質 / 動物 / 極限環境耐性 / クマムシ / 親水性 |
Research Abstract |
乾燥耐性・極限環境耐性を持つクマムシについて、その耐性能力に関与する候補タンパク質を探索した。まず発現プロテオミクス解析を行った結果、乾燥時に再現性良く顕著に発現変動するタンパク質は見いだされず、耐性に関与するタンパク質は乾燥ストレスの有無に関わらず常に発現して準備されている可能性が示唆された。そこで、次に機能プロテオミクスを行った。まず、乾燥時に変性凝集しないタンパク質の候補として、100℃という変性ストレス条件下で凝集しない抗凝集性タンパク質を検索した。その結果、SDS-PAGE上3本のバンドを候補として見いだし、これらがクマムシ体内で常時大量に発現していることを明らかにした。これらのバンドを質量分析した結果、構造上3つのファミリーに分類される5種の新規タンパク質を同定した。高次構造を予測したところ、これらはいずれも高親水性で決まった構造をとらないタンパク質(intrinsically unstructured proteins)であり、大量に存在することを考えると乾燥時に他のタンパク質などの周囲をフレキシブルに覆うことで変性ストレスからの保護に寄与する可能性が示唆された。一次構造から細胞内局在を予測したところ、ファミリーごとにそれぞれ分泌・細胞質・ミトコンドリアと異なる局在を示すことが示唆され、細胞内の様々な場所で同様の機能を分担している可能性が考えられた。クマムシゲノムに対する相同性検索の結果、3つのファミリーに属する遺伝子(パラログ)は今回同定した5種のタンパク質以外に数多く存在することが分かった。これらクマムシ固有の遺伝子は、クマムシの進化の過程で重複を起こしたと考えられることから、耐性などクマムシ特有の性質に重要な役割を担う可能性がある。
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Research Products
(3 results)