2009 Fiscal Year Annual Research Report
流域保全に向けた河川中流域における河床露盤化の実態把握とその影響評価
Project/Area Number |
21710247
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
根岸 淳二郎 Hokkaido University, 大学院・地球環境科学研究院, 特任助教 (90423029)
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Keywords | 氾濫原 / 河床低下 / 流域保全 / 底性動物 / 生息環境 |
Research Abstract |
本研究は、中流域における河川環境劣化機構の一部を明らかにし、今後の河川生態系保全に資することを目的としている。本年度の研究成果について次に述べる。調査研究計画に基づき、調査対象区間において縦断方向に約1km毎に横断側線を設定し、それらに対して、河床状況および流速、水深等の詳細な調査を行った。調査区間の河床のうち、約60%を占める領域で、礫や砂といった自然堆積物が見られず、その代わりにその下層に本来存在していた堆積粘土層が露出していた。この粘土層は圧密度が非常に高く、増水時にも土砂のような流送による移動を容易にはしない状態であった。粘土層は、自然条件下では存在しないような安定した河床状態を形成しており、板状の扁平な表面を有することか空間的な変異性に極めて乏しい状態を呈していた。一般的に、河床に依存して生息する水生昆虫や底性魚類は、河床表面の空間的複雑性が高いほうが個体数および種数も高いことが報告されている。さらに、調査区間近辺はアユの産卵や生息にとって好適な環境として知られてきたが、粘土版河床はおそらくアユの餌資源である付着藻類の繁茂には不適当であると考えられた。したがって、今回みられた河床状況は生物の生息環境としては極めて質の低いものであり、河床低下による本流域河床環境の変化が生物の生息環境としての著しい劣化を伴っていることが示唆された。また、一部の箇所において数十年の間に20メートル程度も河床が深ぼれしている箇所も見つかり、その潜掘はいまだ進行中であることも確認された。我が国においては、中下流域の河川環境を対象にした既往研究事例が極めて少なく、本研究から明らかになりつつある知見は河川管理上極めて重要である。今後は、水生昆虫群集の生息環境やアユの餌場としての河床環境劣化の定量化を進めるとともに、他の河川の状況を把握し、世界中で報告されている河床低下の詳細な現状および将来予測を行っていく予定である。
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