2011 Fiscal Year Annual Research Report
流域保全に向けた河川中流域における河床露盤化の実態把握とその影響評価
Project/Area Number |
21710247
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
根岸 淳二郎 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 特任助教 (90423029)
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Keywords | 氾濫原 / 河床低下 / 流域保全 / 底生動物 / 生息環境 |
Research Abstract |
本研究は、中流域における河川環境劣化機構の一部を明らかにし、今後の河川生態系保全に資することを目的としている。本年度の研究成果について次に述べる。調査研究計画に基づき、調査対象区間において河床地形をさらに詳細に把握するために、カヌーおよび魚群探知機による河床地形測量を行った。また、河床低下に伴い露出した粘土基質河床の生物の生息場としでの機能を定量的に把握するために、数タイプの河床基質(礫、砂、水草、および粘土)において底生動物の定量採取を行った。その結果、これまで、縦断方向200メートルピッチでしか得られていなかった河床地形を連続的かつ効率的に把握することができた。調査対象区間全域にわたり河床面が自然状態に比べて不連続的になっており、数か所において著しい局所潜掘が進行していることが明らかになった。平成23年の9月に中部地方を直撃した台風12号の影響から、粘土性の河床が上流域へ拡大していることが確認され、また最深部の水深が20mに至ることが明らかになった。一方、底生動物の定量調査から、流速の比較的緩い粘土性の河床面には公害虫として認知されているオオシロカゲロウが著しく高い密度(平方メートル当たり100個体)で生息していることが示された。また、それらの密度は大量羽化が確認された同年10月にはほぼゼロとなっており、河床低下により露出した粘土性河床面が本種の主要生息地および発生源となっていることが推察された。今後は、水生昆虫群集の生息環境やアユの餌場としての河床環境劣化の定量化を進めるとともに、他の河川の状況を把握し、世界中で報告されている河床低下の詳細な現状および将来予測を行っていくことが必要である。また、本課題を通じて極めて深刻な中流域河川環境の劣化が示されたことから、河川管理者は早急な河床低下対策を施すことが必要である。
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