2010 Fiscal Year Annual Research Report
カンボジア仏教の再生と変容に関する総合的研究:ヒト・モノ・カネの移動と制度の再編
Project/Area Number |
21710259
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 知 京都大学, 東南アジア研究所, 助教 (20452287)
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Keywords | 上座仏教 / 宗教と社会 / 東南アジア / カンボジア / 文化人類学 / 地域研究 / 宗教施設 / 地域情報学 |
Research Abstract |
平成22年度は、カンボジア中央部のコンポントム州において、平成21年度に訪れた当該地域の85の仏教寺院を再び訪問し、寺院の組織運営の実態と僧侶・見習僧らの経歴に関する調査を行った。同一寺院を対象とした2年にわたる調査からは、当該寺院がこの1年間にどのような変化を遂げたのかを実証的に検討するうえでたいへんに貴重なデータを得た。例えば、僧侶・見習僧の出家中の行動を分析する際の重要なデータとして、前年に当該地域の85寺院に止住していた僧侶・見習僧で、今年も同じ寺院に止住を続けていた者は3分の1であり、その他の3分の1は地域内外の別の寺院に移動して出家生活を継続し、また残りの3分の1は還俗して世俗社会に戻っていた事実が明らかになった。コンポントム州における平成22年度の調査では、また、昨年度はまだ存在しておらず、この1年間に新たに建立された寺院施設を2カ所確認することが出来た。平成22年度は、また、1週間に満たない短期間ながら、カンボジア北東部のストゥントラエン州において予備的な調査活動を行った。ストゥントラエンの州都に滞在し、車を借り切って周辺地域を走破してランダムに寺院を訪問し、寺院の歴史と僧侶・見習僧の経歴について聞き取りを行った。以上の調査活動では、ストゥントラエン州の地域の歴史やクメール人とラオ人のあいだの民族間関係についての参与観察に加えて、ストゥントラエン州の成年男子のなかには、少年期に見習僧となった後、青年期にあらためて僧侶として得度した人物が相当数みられるといった新たな知見を拡げることが出来た。しかし、同時に、ストゥントラエン州は道路事情が予想以上に劣悪で、計画していたような寺院の訪問調査の実施が困難である点も明らかになった。 以上のように、平成22年度は、カンボジア仏教の農村部での実践形態を考察する上での貴重な一次資料を収集した。
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Research Products
(2 results)