2009 Fiscal Year Annual Research Report
フーコーを中心とした、フランス現代哲学における主体理論の展開
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21720010
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
阿部 崇 Aoyama Gakuin University, 文学部, 准教授 (60508175)
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Keywords | 哲学 / 思想史 |
Research Abstract |
本研究は、フーコーの哲学的思考を哲学史的な展望の中に位置づけた上で、そこに見出される新たな問題系と方法論を通じて新たな哲学の方向性を探ることを目指すものである。まず今年度は、フーコーの著作を時代のコンテクストの中に置いて分析する作業の一貫として、フーコーが一九七〇年代から八〇年代にかけてコレージュ・ド・フランスで行った講義を主な研究対象とし、その内容についての分析、ならびに同時代の他の政治的・文化的出来事、また他の哲学者(とりわけドゥルーズ)の思考、さらにはフーコーの他のテクストの研究を行った。「主体」と「環境」との二項対立がいかに哲学的視点から問題化されたかという点について、「真実を語ること(パレーシア)」という主題についてのフーコーの議論を精読し、哲学する主体と真理との関連、そしてそれが自己を主体として構築し、他者を統治する主体となる過程を検討した結果、フーコーの理論における哲学と政治との関係の独自性、そして主体の構成との関連における哲学的真理のあり方を明らかにすることができた。今年度の研究のうち上記の点については、フーコー講義録の翻訳および解説の出版(『自己と他者の統治』筑摩書房、二〇一〇年刊行予定)というかたちでまとめている。また、研究協力者との数度にわたる討議を通じて、フーコーの「真理の主体としての自己」の問題系をストア派哲学(セネカなど)の理論をもとに明確化する作業を行った。この作業については来年度も継続する。
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