2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘレニズム・ローマ期の哲学における「運命」論の全体像
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21720027
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 智彦 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (30422380)
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Keywords | 思想史 / 西洋古典 / 哲学 / 倫理学 |
Research Abstract |
本研究は、ヘレニズム・ローマ期にはじめて主題的に論じられ、その後の西洋思想にも大きな影響を与えた運命と自由意志の問題について、これまでの研究成果を踏まえつつ多角的に検討した上で、その全体像と哲学的・哲学史的意義の解明を目指すものである。本年度はその最終年度として、昨年度までの個別的な研究に基づき、全体的な総括に取り組んだ。残された個別的な課題としては、本研究の主題に関する新プラトン主義の議論の重要な資料となるプロクロス『摂理、運命と自由について』の日本語訳(田子多津子氏との共訳)が、既刊の前半に続き後半も投稿・査読を経て学会雑誌への掲載が決まっており、2012年度中に公刊される予定である。また、本研究に関連したヘレニズム・ローマ期の倫理学についても、論文「カルネアデスの反正義論の射程」を発表した。本研究の全体的な総括にあたるものとしては、まず、本研究の主題に関する最新の重要な研究書であるMichael Frede, A Free Will(2011)の書評を担当し、本研究との違いを明らかにする機会にもなった。また、新たな西洋哲学史シリーズ企画において、「ヘレニズム哲学」の一章を担当した。本研究の成果も反映させたその解説を通して、古代ギリシア哲学の中でも一般にはよく知られていないヘレニズム・ローマ期の哲学について、その正確な知識と哲学的・哲学史的な意義を伝えたいという、本研究がめざしていた目的の一つを果たすことができた。最後に、本研究の集大成としては、一般向けの解説書を執筆するという当初の計画を発展させ、専門的な研究書にまとめることになった。その準備は着実に進んでおり、2012年度中には出版される予定である。
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