2010 Fiscal Year Annual Research Report
パウル・クレーとアジア・オリエント――1920年代の作品と思想を中心に――
Project/Area Number |
21720035
|
Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
野田 由美意 成城大学, 文芸学部, 非常勤講師 (00537079)
|
Keywords | 美術史 / 比較文化 / パウル・クレー |
Research Abstract |
本年度はまず、昨年度の調査結果を、論文「1919-1920年代前半における読書を通じてのパウル・クレーとアジア・オリエントの関係」にまとめた。その中でクレーが蒐集したアジア・オリエント関係の本をリスト化し、献辞が書き込まれたものについては本の入手経路等を明らかにした。その上で、1909年~第1次大戦期の蒐集第1次ピークと本研究の主眼である1919-24年の第2次ピークの特徴を比較し、その蒐集の背景を考察した。それによって、この時期の蒐集がヴァイマール・バウハウスでの秘教的なものへの関心など、当時話題となり流行となった事柄と密接に関係していることが分かった。さらに、1919-24年に制作された中国に関する作品群を取り挙げ、上記の読書体験が作品にいかに反映しているのかを検証した。総じてこの研究において、これまで部分的にしか伝えられなかった蒐集本の全貌と、その蒐集の背景を明らかにしたことにより、クレー研究の新しい地平を開いたと考える。 また本年度は、スイス、ドイツ等で1919-24年に作られたアジア・オリエント関係の作品の調査を中心に行った。ヴァイマール・バウハウスを中心としたクレーの制作環境と照らし合わせて中でも特に重要な作品と見なされる、《中国風のII》(1923年)、《アッシリアの遊戯》(1923年)、《インドの花園》(1922年)に関して、ベルンのパウル・クレー・センターやザールブリュッケンのザールラント美術館で集中的な調査を行い、それぞれの作品の制作方法等が明らかとなった。またベルリンのバウハウス文書館、ヴァイマールのテューリンゲン州立中央文書館などでは、1922年にカルカッタで行われたバウハウス展に関する資料や、その周辺に関する資料を調査した。こうした調査によって、この時代のクレーやその周辺の作家たちにおけるアジア・オリエントへの関心の広がりがより明らかとなった。
|
Research Products
(5 results)