2010 Fiscal Year Annual Research Report
シギズムンド・クルジジャノフスキイと演劇:ロシア・アヴァンギャルドと世界劇場
Project/Area Number |
21720055
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上田 洋子 早稲田大学, 演劇博物館, 助手 (40505400)
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Keywords | 芸術諸学 / ロシア東欧文学 / 美学 / 美術史 |
Research Abstract |
本研究の目的はロシア語作家シギズムンド・クルジジャノフスキイ(1887-1950)の創作における演劇の問題を同時代の演劇と比較考察することである。とりわけ(1)「世界劇場」の概念の拡大(2)「約束事」の意図的な利用という、この作家に顕著にみられるモダニズム的現象を取り上げ、文学と演劇のジャンルの越境を探った。初年度の研究ではクルジジャノフスキイの演劇観を再考したうえで、演出家メイエルホリドの演劇における約束事や法則の問題に着手した。今年度はこの問題を発展させ、モスクワでの資料調査を経て(2010年11月)、メイエルホリドが芝居を言葉・美術・音その他諸要素からなる構成物として創作する際の問題意識を明らかにした(論文「フセヴォロド・メイエルホリドと演劇の構成主義」)。また、本研究の昨年度の成果「メイエルホリドの演劇と生涯」展(早稲田大学演劇博物館、2010年3月~4月)を再考し(学会発表"The Meyerhold Exhibition 2010 in Tokyo)、メイエルホリドにおける約束事と法則の問題を日本演劇の「型」への意識とロシア演劇に関する研究へ発展させた(学会発表"Первые гастропи театр а кабукив CCCP")。 2011年3月には同館で「コレクションに見るロシア演劇のモダニズムとアヴァンギャルド」展を企画・開催、図録を作成した。これは同館所蔵の大量の未整理資料を含む資料調査の成果である。この枠内で、当初予定していたタイーロフに関する調査・研究に着手した。また、ベルリンでロシア構成主義と意識を同じくしているバウハウスの芸術運動に関する調査を行った(2010年7月~8月)。タイーロフの演劇に関する本格的な研究、また研究成果の全体を踏まえた上でのクルジジャノフスキイの創作と演劇との比較考察は今後の課題としたい。
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Research Products
(6 results)