2009 Fiscal Year Annual Research Report
西洋音楽受容研究―アドルフォ・サルコリにみる「官」と「民」―
Project/Area Number |
21720059
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
直江 学美 Kanazawa Seiryo University, 人間科学部, 講師 (90468976)
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Keywords | 音楽学 / サルコリ / 西洋音楽受容史 / ベル・カント / イタリアオペラ |
Research Abstract |
サルコリは、日本滞在中は一貫して「民間」に留まったため公の文章には記述がほとんど見られない。三浦環や関屋敏子という日本の声楽界を変えた人物を門下に数多く輩出しながらも、サルコリの人物像がほとんど忘れられているのも、民間にいたためと考える。 初年度である平成21年度は、とにかく、日本に残るサルコリの記事、資料等の収集を中心に調査を進めた。また、サルコリの近くにいた丸山徳子氏への聞き取り調査、サルコリの遺品調査の結果、これまで発見されなかった多くの直筆の手紙、当時の雑誌、新聞の記事等を発見するに至った。現在、データベース化の作業に入っている。 また、国立国会図書館では、特に日本の新聞記事にしぼり、サルコリの記述を一つ一つ拾う作業を行った。これまで見つからなかった、小さな記事も数多く拾うことができ、その記事からサルコリが日本にもたらした影響を考察した。特に、サルコリの死亡記事に光を当て、当時の人々のサルコリに対する認識を調査。その結果、日本における西洋音楽の「生みの親」として認識されていたことが分かった。「わが楽壇最大の恩人」(『讀賣新聞』1936年)とまで言われたサルコリに対する賛辞からも、日本の音楽界に、新しい一石を投じた存在と認められていたことをつきとめた。 初年度、西洋音楽受容期におけるサルコリの影響を考察し、サルコリの存在が、音楽界のみならず、当時の一般の人々にも認識されていた事を明らかにした結果は、星稜大学人間科学研究第3巻第2号に執筆した。
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Research Products
(1 results)