2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代文学の「家庭」表象において境界的存在(女中・妾・不良)が果たす機能の研究
Project/Area Number |
21720070
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
古川 裕佳 都留文科大学, 文学部, 准教授 (80405076)
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Keywords | 日本近代文学 / 女中 / 白樺 / 志賀直哉 |
Research Abstract |
日本近代文学の〈家庭〉表象について前年度に引き続いて調査・研究を行った。とくに文学作品における表象の機構について検討するため、文学文献を購入、複写して、重点的に分析した。二十世紀初頭の文学において、家の女中と性的関係をもったことについて苦悩する、若い男性作家の作品には共通した機構があることについて考察した。その際、とくに志賀直哉の作品に注目し、〈家庭〉イデオロギーからの逸脱者を描くことが、当時の文学にとって重要な課題であったことを明らかにし、以下の形にまとめ公表した。 『志賀直哉の〈家庭〉女中・不良・主婦』(森話社、2011年2月)では志賀直哉の中期作品における〈家庭〉という場の描かれ方に注目し、小説作品における想像力について検討した。分析にあたって、「女中」という存在が小説に与えた影響を考察することで、男性作家の自己像の分析に新しい切り口を見出した。さらに「主婦」の空間であるべき〈家庭〉が境界的な存在によって脅かされているさまを検証した。志賀直哉だけではなく、谷崎潤一郎や佐藤春夫、里見〓の問題についても論じた。また「志賀直哉「憶ひ出した事」-相馬事件の〈記憶〉と思い出されなかったこと」(『文科の継承と展開』都留文科大学国文学科編、勉誠出版、2011年3月)においては、歴史をさかのぼって、御家騒動として話題になった相馬事件と志賀直哉の関係についてとりあげ、民衆の敵となった経験を思い出そうとすることの意義を検証した。また同時に家からの逸脱者としての相馬藩主と志賀直哉の作品の「不良」的な主人公との関連性を、〈記憶〉の描かれ方に注目して論じた。
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Research Products
(2 results)