2010 Fiscal Year Annual Research Report
博文館長篇講談の研究―芥川龍之介を中心とする大正期文学の材源として―
Project/Area Number |
21720083
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
奥野 久美子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (50378494)
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Keywords | 博文館長篇講談 / 芥川龍之介 / 講談本 / 大正期 / 菊地寛 |
Research Abstract |
22年度は21年度に行った、博文館長篇講談の網羅的調査という研究形式から方針をやや変更し、講談種と思われる大正期の文学作品を選び、その作品と博文館長篇講談その他講談本との関わりを調査研究した。この形式のほうが大正期文壇と博文館長篇講談との関わりを考察する上で効率的であると考えた。具体的には、菊池寛の戯曲「岩見重太郎」と、同じく菊池寛の小説「入れ札」の研究である。 「岩見重太郎」については、調査研究の結果、菊池寛が博文館長篇講談を参照したことが明らかとなった。この研究に関しては22年7月31日の京都教育大学国文学会において口頭発表し、その内容を論文化したものは23年6月発行予定の「京都教育大学国文学会誌」に掲載予定であり、22年度中に執筆し既に入稿済みである。この研究の重要性は、これまでの私の研究により、博文館長篇講談を種本と利用したことが明らかになっている作家、芥川龍之介と荒畑寒村以外に、菊地寛も同叢書を利用していたことを初めて証明したことである。菊池寛と講談本との関わりを明らかにした先行研究自体がない中で、十分な意義を持つものと考えている。一方の「入れ札」に関しては博文館長篇講談との関わりは薄いということが判明した。22年度、かなりの時間を費やし典拠と思われる文献を探したが、いまだ特定できておらず、この作品に関する研究は23年度も継続し、23年度中に成果を発表したいと考えている。
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Research Products
(1 results)