2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代文学を通して眺めた20世紀の極限体験(収容所や原爆)
Project/Area Number |
21720127
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安原 伸一朗 日本大学, 商学部, 准教授 (80447325)
|
Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2013-03-31
|
Keywords | フランス文学 / 強制・絶滅収容所 / ショアー / 対独協力 / 国際情報交換 / フランス |
Research Abstract |
平成24年度は、第一に、ナチ占領下のフランスにおけるユダヤ人迫害について、1942年7月に起こった「ヴェルディヴ事件」を中心に、主としてパリの作家たちの反応について研究を進めた。4千名を超える子供たちも含めて計1万3千名余りが収容され移送されるという事件を目の当たりにして、パリの作家たちの中では、ジャン・ゲーノが日記で、フランソワ・モーリヤックが偽名の小冊子においてそれぞれ告発し、ドイツ軍将校としてパリに赴任していたエルンスト・ユンガーまでが強い嫌悪感を日記に記したのとは対照的に、社交界の花形だったジャン・コクトーをはじめとして、この事件がまるで存在しなかったかのように振る舞い続ける人々も存在したことが分析された。この研究の方向性は、現時点で、「ヴェルディヴ事件とパリの作家たち」に示しているが、今後、収容された側の証言の分析も含めて、論文として詳細を発表する予定である。 第二に、フランスでのショアー研究の第一人者、アネット・ヴィヴィオルカ氏を囲んだ国際シンポジウムにおいて、銃による虐殺や強制・絶滅収容所の被害体験がしばしば「物語」として書かれることの意義をめぐって口頭発表を行ない、現代ドイツ史の専門家も含めた歴史家たちと議論を行なった。その議論を通じて、歴史学では等しく貴重な資料とされる法廷での証言や私的な日記とは異なって、文学とも言える「物語」としてまとめられた「証言-物語」には、被害をこれ見よがしに提示するという性格の欠如、生き残りは真正なる証人ではないという自己認識、自分の体験を共通言語で伝達することの不十分さの意識など、種々の欠落が内包されていることが解明された。また同時に、その欠落感が汲みつくせない源泉として、次世代による作品を生み出していることが明らかになってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|