2009 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア語の動的事象の推移の記述にみられる言語的世界像
Project/Area Number |
21720133
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
金子 百合子 Iwate University, 人文社会科学部, 准教授 (80527135)
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Keywords | ロシア語 / アスペクト / 限界 / 意味的優勢素 / 言語的世界像 / 日本語 |
Research Abstract |
1,限界動詞をスラヴ諸語を対象に検討したマスロフと日本語を対象にしつつ普遍的な動詞意味特徴として位置づけたホロドーヴッチでは,各々の限界を導き出す視点が異なる.前者は過程の自然な終了を目指す「過程→(終了)限界」であり,後者はある唯一の結果を導く前提として先行過程の限界を想定する「限界←結果」である.この視点の違いにより,両者による限界動詞の分類は一致しない. 2,1で述べたことはロシア語において典型的な限界動詞が終了指示動詞である根拠となるが,日本語では,限界の意味を積極的に含むのは結果動詞(主体変化動詞)であり,他動詞による限界の指示は希薄である.関連して,日本語の結果否定構文(焼いたけど焼けなかった)はヴォイスの範疇と交差するが,このような文はロシア語では動詞の体ペアによって表される,アスペクト範疇の問題である. 3,ロシア語の接頭辞の多くは基盤動詞を完了体化するのでその派生動詞は明確な文法的限界性を獲得する.中でも結果動作様式に属する接辞は形式的,意味的に詳細に差異化されている.一方,不完了体化する接辞は少なく低強度や反復といった意味を加えるのみである.ロシア語において特に基盤動詞と体ペアを構成する完了体派生動詞はその語形成意味が既に基盤動詞が指示する過程の当然の結果として潜在的に語彙意味に組込まれているため,動作の結果はある特定の語形成意味を有する派生動詞で表す必要がある.日本語の場合,動作の結果を表す複合動詞の使用は語彙的,恣意的である(razrezal arbuz na cetyre cast'-スイカを4つに切った/切り分けた).また,複合動詞が動作の結果を明示する場合,それは先行過程の遂行に関しても何らかの補足的な情報を与えることがある(手紙を書いた/書き上げた).
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Research Products
(4 results)