2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720232
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
添田 仁 Kobe University, 人文学研究科, 助教 (60533586)
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Keywords | 開港場 / 長崎 / 地役人 / 居留地 / 神戸 / 遊女 |
Research Abstract |
長崎・横浜・函館・神戸・大坂の府県外務課の「官員録」「職員録」から、開港場で勤務した職員の役職と名前を抽出し、維新期における長崎から各開港場への人員の異動の傾向を分析した。とくに、I長崎から神戸・大坂に旧地役人が派遣され、開港場行政の中核として活躍していたことを明らかにした。また長崎県(府)の「外務課事務簿」を素材に、各開港場における課題と、それをうけて開港場行政において長崎が果たした役割を分析した。II長崎旧地役人が「自由貿易」の実現を求めて開港場に押し寄せてくる外国人と直接対峙し、近世以来のノウハウを用いて、開港場間での貿易実務の統一や外国人とのトラブルの調整を行っていたこと、III維新政府は、開港場における「外雇ノ内人」(ラシャメン・仲仕などの肉体労働者)の厳密な把握について統一的な対策を打ち出せず、実態的には、各開港場において外国人との間に築かれてきた慣習によって形式的に管理されるにすぎなかったこと、それに対してIV近世以来、外国人と接してきた長崎は、「外雇ノ内人」を管理するシステムを独自に生み出していたこと、さらにはV日本人の海外流出の監視や、海外からの送還まで担当していたことを明らかにした。 I~Vは、開港場行政において長崎が、近世以来のノウハウを駆使しながら、諸外国の「自由貿易的姿勢」に対抗する管理貿易の指導者、ならびに日本国内の開港場と東アジア世界とをつなぐ門扉の門番としての役割を果たしていたことを示す。このことは、「開国」をかかげた維新政権のもとで長崎の果たした役割が、実態的には、近世外交体制=「鎖国」体制のもとで長崎が果たしてきた役割と軌を一にしていたものであったことを明らかにした点で重要である。つまり、これらの事実は、近世・近代移行期を維新変革と表裏一体をなす外交体制の転換点=<近世・近代の断絶>と捉える歴史イメージに対する反例としての意義を有するものである。
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Research Products
(7 results)