2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720256
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 貴保 新潟大学, 研究推進機構超域学術院, 准教授 (40403026)
|
Keywords | 西夏 / 交通制度 / 中央ユーラシア史 / 西夏語文献調査 / ロシア |
Research Abstract |
本年度は、平成21・22年度の研究によって得られた成果をもとに、西夏王国の交通制度、特に政府から派遣された使者が携行する「符」や「牌」等の使用方法(符牌制度)が、同時代及び前後の時代の東アジア・中央ユーラシア諸国家の制度と比較して、どのような特徴を有しているのか比較、考察した。 考察の結果、1)西夏において、通行手形である「牌」を所持する者が、「頭子」とよばれる文書を同時に携行することによって初めて道中で駄獣を調達できる制度は、西夏と同時代の宋王朝、前の時代の唐王朝にはなく、西夏を滅ぼしたモンゴル帝国には存在すること、2)中央政府から地方に挙兵を知らせる使者の身分証として用いる「符」は、西夏のみならず東アジアの各王朝でも存在するが、地方の軍管区から管轄下の軍団に挙兵を知らせる際に使者が「符」を携行する制度は、西夏の制度にしか見られないこと、3)西夏では、皇帝側近の者が使者として派遣される際に身分証として「鉄箭(鉄の矢)」を携行するが、首長の使者であることを証明するために矢を携行する制度は、5~10世紀の中央ユーラシア諸国家で一般的に行われており、西夏はその制度を踏襲していることが明らかになった。 本研究によって、西夏の符牌制度には、この国独自の制度がみられる点があるものの、西夏の前時代の中央ユーラシア諸国家の影響を受けている側面も少なからず見られ、西夏を滅ぼしてユーラシア大陸に史上空前の大帝国を築いたモンゴル帝国に受け継がれていた制度も存在する可能性があることを明らかにすることができた。本研究の手法は、西夏王国の存在が中央ユーラシア・東アジア史の流れの中にどのように位置づけられるか、制度史の面からとらえ直す上でも意義深いものとなった。 以上の考察結果は、平成24年6月にロシアから英文論文として発表する予定であり、その一部を平成24年3月に学会で報告した。
|
Research Products
(2 results)