2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720259
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 直子 Tohoku University, 国際交流センター, 講師 (50421219)
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Keywords | 近代史 / 婚姻法 / インドネシア / 個人史 / 地域研究 |
Research Abstract |
本研究は近代インドネシアにおける婚姻の制度化の歴史をオランダ植民地政府、現地知識人、村落社会という三つの視点から考察し、植民地社会に存在した多様な法や規範が交錯する社会空間を理解することを目的としている。初年度であるH21年は、植民地政府の認識や政策に焦点をあて調査をすることにした。12月にオランダの公文書館で所蔵されている蘭領東インドの植民地行政文書中心に文献調査を行った。植民地政府が現地社会の婚姻慣行に対してどのように介入したのか、また植民地経営において婚姻問題はどのように位置づけられていたのかを明らかにするために、関連するオランダの議会資料や植民地政府と本国植民地省との間の通信記録等を精査した。その結果、1937年に発生した激しい反政府運動を誘引する直接的な原因である「婚姻条例案」に関わる「極秘扱い」とされていた貴重な文書を発見することが可能となった。これにより、それまで現地社会の婚姻慣行に対し消極的な姿勢を維持していた政府が、積極的に介入する立場を取ることになった背景が明らかとなった。 またH21年度の前半期には、それ以前に行ってきた文献調査やフィールドワークで得られた史・資料に基づく考察を発表する機会を得た。一つは、20世紀初頭の西スマトラ現地社会を映し出す史料として非常に重要な、イスラーム指導者が残したジャウィ文字の文献を用いた研究の可能性について発表した。もう一つは、昨年9月の西スマトラ地震をふまえ、現地で行った個人史調査の結果をもとに婚姻関係を通してみえる西スマトラ村落社会の家族関係やジェンダー、コミュニティの成り立ちについて発表をした。この発表についての報告書「支援の現場と研究をつなぐ-2009年西スマトラ地震のけるジェンダー、コミュニティ、情報」が3月に出版された。
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