2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720259
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 直子 東北大学, 国際交流センター, 講師 (50421219)
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Keywords | 東南アジア / インドネシア / 近現代史 / 地域研究 / 婚姻法 / 家族 |
Research Abstract |
本研究は、近代インドネシアにおける婚姻の制度化の歴史を、オランダ植民地政府、現地知識人、村落社会という三つの視点から考察し、植民地社会に存在した多様な法や規範が交錯する社会空間を理解することを目的としている。H22年度は、H21年度に実施したオランダ調査をふまえ、酉スマトラの世俗的知識人の多妻婚をめぐる言説と植民地政府の多妻婚慣行についての認識を分析した。先行研究では、1937年に多妻婚を禁止する条例案が提示された後の知識人の議論のみが考察され、「西洋文明」と「非西洋/イスラーム」という二項対立で論じられる傾向があったが、本論文では、より豊かで複雑な思索の営みが、当時の知識人の間に存在していたことを明らかにすることができた。 またH22年度は、イスラーム知識人の言説にも注目した。20世紀初頭に出版されていたキタブ(イスラーム宗教書)を通して発信されでいた婚姻規範や多妻婚解釈を分析した。本考察はH21年に国際会議で発表した"Primitive Marriage or Permitted Marriage,the Discourse on Polygamy 1900-1930"を基礎としており、今年度「変貌する家族」というテーマで、国内外の研究者の論文と共に英語で出版されることになった。 さらに、H22年度は、6年前に実施した西スマトラ村落での個人史調査のフォローアップを現地で行った。植民地期から現在にいたる婚姻関係と家族の変容を考察するためのデータを収集した。また、2009年西スマトラで発生した震災に関連して企画された東南アジア学会研究大会において、「西スマトラ社会の柔軟性-婚姻や家族に関する規範から」の報告をする機会を得た。 また東日本大震災により実施できなかった文献調査をH24年度に入り行なった。植民地統治法や家族法規定をめぐる事実関係を確認することができ、H24年11月の学会発表が可能となった。
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Research Products
(3 results)