2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世イタリア諸都市におけるキリスト教徒とユダヤ人の関係性
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21720272
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藤内 哲也 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (60363602)
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Keywords | ユダヤ人 / ゲットー / イタリア / ヴェネツィア / アシュケナジム / セファルディム / 近世 |
Research Abstract |
本年度は、まず課題(1)「イタリア諸都市におけるゲットーの成立と展開」に関して、昨年度に成立過程について研究成果をまとめたヴェネツィアのゲットーが、16世紀中葉以降に拡大されるプロセスとその背景について検討した。その結果、アシュケナジムの金融業者を対象としてゲットーが設置されたヴェネツィアでは、地中海商業の活性化を図るために、イベリア半島に出自を持つセファルディムのユダヤ商人の誘致と定着を目的として、ユダヤ人からの要請に応じる形でゲットーの拡大が実現したこと、したがってゲットーへの居住強制は継続されるものの、ゲットーの拡大という現象は、むしろセファルディムのユダヤ商人に対する「特権」としての性格を持っていたこと、さらにこうしたセファルディム商人への優遇とアシュケナジムへの抑圧というダブル・スタンダードがゲットーという単一の場で実現していた点をヴェネツィアのユダヤ人政策の大きな特徴として指摘できることが確認されたため、これらの成果をまとめて論文として刊行した。また、セファルディム商人を優遇してヴェネツィアに対抗しうる港湾都市となったアンコーナやボローニャ近郊のレッジョ・エミーリャにおいて、旧ゲットー地区やシナゴーグ等の現地調査を実施した。 一方、課題(2)「キリスト教徒とユダヤ人の関係性について」は、前年度に引き続きヴェネツィアのユダヤ知識人レオン・モデナの自伝を基に、ゲットー内外でのユダヤ人とキリスト教徒との間に結ばれた人間関係の諸相についてさらに検討を進め、非制度的な知識人間の交友関係やバトロネイジ関係と、都市社会で反ユダヤ感情が高まった時期におけるそうした関係の無力化などの点を中心に、これまでの成果をまとめて口頭発表を行った。
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Research Products
(2 results)