2010 Fiscal Year Annual Research Report
性からみるオリシャ崇拝の変容:アフリカ由来の宗教を実践するアメリカ黒人の社会運動
Project/Area Number |
21720324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小池 郁子 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (60452299)
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Keywords | アメリカ黒人 / 社会運動 / 性 / オリシャ崇拝 / 人種(民族) / 宗教・文化実践 / ナイジェリア(ヨルバ) / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
本年度の研究では、アメリカ黒人の社会運動と深い関わりのあるつぎの領域について考察を試みた。すなわち、米国の正常(健全)な家族像から逸脱しているとされてきたアメリカ黒人の家族、とりわけ社会的病理として捉えられてきたアメリカ黒人男女の家族形態に注目し、そこで人種と性がいかに交錯しているのかを検討した。 アメリカ黒人の家族は、経済学、社会学、都市人類学をはじめ、様々な領域において分析されてきたが、そうした分析にはある種の共通点をみいだすことができよう。その共通点とは、アメリカ黒人の家族を性の逸脱や男性不在の家族という視点から問題化、あるいは説明してきたということである[ブラッドリー2010(2008)、リーボウ2001]。そこでは、アメリカ黒人男性は白人女性の純潔を守るため、白人の監視下におかれるべき野蛮な存在として位置づけられている。一方、アメリカ黒人女性は、男性を精神・聖、女性を肉体・汚れとみなす米国の価値観のもとで、貞淑な白人女性とは異なり、白人男性を誘惑する淫らな女性というように、二重の負のラベルを課されている[アンチオープ2001、萩原2002]。また、男性不在の家族形態は、アメリカ黒人男性の高い収監率によるものであり、アメリカ黒人男性が社会、つまり家族、学校、労働、地域社会から孤立する生活環境を再生産していると分析されてきた。よって、男性不在の家族は、女性を世帯主とする家族に顕著な福祉依存、すなわちアメリカ黒人の家族に特徴的な「家母長制」の原因としても説明されてきた。ただし、本研究で注目しておきたいのは、現代米国においていまだ正常な家族像として提示される「(白人の)伝統的家族」は、奴隷制度から生じた人種的、性的、社会経済的な社会環境なしには成立しえなかったということである。
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