2009 Fiscal Year Annual Research Report
宮座組織における長期記帳史料の類型と機能に関する研究
Project/Area Number |
21720328
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡部 圭一 Waseda University, 人間科学学術院, 助手 (80454081)
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Keywords | 官座 / 頭役祭祀 / 官座文書 / 長期記帳史料 / 帳面 / 規約・掟 / 宗教的権威 / 世俗的権威 |
Research Abstract |
複雑多岐にわたる宮座文書の全貌にはいまだ不明確な部分が多い。本研究では、宮座文書を代表する史料群として記帳史料(帳面)に注目し、中~近世・近~現代を貫くその長期的な伝世事例の調査を行った。宮座のなかでもいわゆる祭祀頭役制を基礎とする組織に注目し、頭人の選定(頭役差定)に関わる「頭役帳」を中心に、帳面のセンサス調査(全点・全丁撮影)と分析を行った。 まず典型的な頭役祭祀の事例である近江湖南(滋賀県野洲市大篠原)の事例では、野洲市歴史民俗資料館の協力を得てセンサス的撮影を完了するともに、現行の頭役選定における帳面の活用、人選基準の変化、神社・自治会の関与のありかたについても詳細な聞き取りを行った。 さらに頭役の選定と帳面の関わりについて一般的な見通しを得ることを目的として、これまで頭役祭祀に類似する祭祀として広く知られてきた岡山県の宮座の調査を開始した。これまで真庭市上河内・新見市豊永赤馬の神社について、近世~現用中の記帳史料および規約文書の撮影を行い、この2地点ではほぼセンサス的撮影を終了した。あわせて「役」の選任をめぐる神社側と村落側の交渉に関する実例データの聞き取りを行った。 以上の調査研究によって、記帳資料と「役」の選定には密接な関わりがあることを再確認するとともに、記帳史料の機能についての類型的な見通しを得るに至っている。すなわち頭役の差定の執行(頭役選定の通知や公表を含む)において、帳面の参照・記帳行為は神社としての宗教的権威と密接に関係しており、現代社会における村落レベル(自治会や区レベル)の世俗的な決定権とは一線を画したものとして受け止められている。こうした知見により、記帳史料を宮座の権威・権力システム全体のなかで理解すると同時に、宗教的/世俗的権威の拮抗からなる現代日本村落の意思決定のありかたについても論理的な展望を得つつある。
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Research Products
(4 results)