2011 Fiscal Year Annual Research Report
宮座組織における長期記帳史料の類型と機能に関する研究
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21720328
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
渡部 圭一 自治医科大学, 看護学部, 非常勤講師 (80454081)
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Keywords | 宮座 / 頭役祭祀 / 宮座文書 / 帳面・帳簿論 / 長期記帳史料 / 規約・座掟 / 宗教的権威 / 世俗的権威 |
Research Abstract |
複雑多岐にわたる宮座文書の全貌にはいまだ不明確な部分が多い。本研究では、21~22年度に続き、宮座文書における記帳史料(帳面)に注目し、その類型化をめざしている。本年度は、祭祀頭役制の「頭役帳」についての補充調査を進める一方、これまでの知見を踏まえた成果発表の期間と位置づけて研究を進めた。 まず近江湖南(滋賀県野洲市大篠原)の事例では、現行の頭役選定における帳面の活用、頭役選出の基準の変化について聞き取りを続行し、焦点となる差定の現行事例について精査した。この結果は「頭役祭祀における聖と俗」(日本民俗学会第63回年会、於:滋賀県立大学、2011年10月)として口頭報告し、さらに論文化を準備中である。 一方、近畿地方の頭役制事例を補完するための調査として、近江湖東に位置する大宝神社(滋賀県栗東市綣)文書の分析を行なった。2010年度に引き続き萩原龍夫旧蔵資料研究会・明治大学博物館の協力のもと、この成果を「萩原龍夫、近江を歩く-寛文十三年『天王祭礼引付帳』と大宝神社文書-」(萩原龍夫旧蔵資料研究会編『村落・宮座研究の継承と展開』岩田書院、2011年9,月)として公表した。 さらに「頭役祭祀」系の史料・儀礼のモデルの一般化を目的として岡山県山間部の宮座の調査を継続し、真庭市・新見市・美咲町の3地点の記帳史料(頭役帳)および規約文書の分析を行った。加えて西日本・東日本各地の頭役制の文献調査をふまえ、現段階での知見を「神々と村落のあいだ-頭役祭祀研究の展望-」(同上書所収)として論じた。 さらに関東地方では、2010年度に茨城県土浦市博物館の協力のもと、同市田村に伝存する近世宮座の座配・規約史料の撮影を行っていたが、本年度はこれを本格化し、史料の翻刻・分析と現地のヒアリングを複数度にわたって行なった。その中間報告は博物館紀要に寄稿(「常陸国新治郡田村の「十六人当」-霞ヶ浦湖岸村落の近世宮座および座配史料-」『土浦市立博物館紀要』第22号、印刷中)し、今後の議論への布石とした。 以上の調査研究を通して、本研究の始めに想定していた通り、頭役祭祀における役の問題が記帳史料の管理権限やそれに裏付けられた頭役選定権限と連関しているとの見通しが確実なものになるとともに、史料管理をめぐるモノグラフ知見を社寺の宗教的権威づけと村落側の世俗的権威づけの拮抗のモデルで理解することが可能になった。
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Research Products
(9 results)