2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730036
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松原 有里 明治大学, 商学部, 准教授 (30436505)
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Keywords | 租税訴訟 / 移転価格税制 / 国際仲裁制度 / 和解手続 / 租税条約 / 仲裁条項 |
Research Abstract |
本年度は研究の最終年度にあたることもあり、租税訴訟の中でも実際に和解手続に入る事例についての理論的考察および個別具体的な事例研究に主に従事した。諸外国と比べて、和解手続に入ることの少ないわが国の租税訴訟ではあるが、それでも、東京都銀行税訴訟以降、近年若干出てきているケースとしては、租税単独の案件ではなく、民事訴訟に近いもの、とりわけ破産法・会社更生法がらみの事案や少額訴訟の場合は、当事者間で和解手続を選択する先例も出てきているようである。もっとも、そのような和解による終結は、裁判所主導で行われるものと原告の自発的取り下げによるものとでは、若干性質が異なる。さらに、最近の一部の行政訴訟(肝炎訴訟・諫早湾訴訟etc.)における和解勧告で見られるようなやや政治的な決着とも取られかねない要因が絡んでいるケースとも上述の租税がらみの和解事案は、その性格が根本的にに異なることから、従来のように、行政訴訟の一部として租税訴訟をとらえた場合、その和解制度の活用に関しては、今後、十分に理論的な裏付けを得た上で、和解手続を行うべきであるという結論に達した。 また、国際課税の分野で最近、租税条約に新たに仲裁条項を導入する動きがOECD加盟国間で盛んに行われている状況もフォローし、ドイツやアメリカの条約ポリシーが今後わが国にどう影響するかについても検討を重ねているところである。おそらく、わが国の課税実務上は、今後、国際課税の分野でまず仲裁手続が整備・活用され、国内法の分野は、判例もしくは事例の積み重ねによって、徐々に和解手続が実務上も浸透していくのではないかと考えられる。前者のケースとしては、移転価格税制をめぐる更正処分等を争うケースに適用できるのではないかと予想される。
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