2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730065
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
宮木 康博 東洋大学, 法学部, 准教授 (50453858)
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Keywords | 身分秘匿捜査 / おとり捜査 |
Research Abstract |
昨年から引き続き、22年度も米国の身分秘匿捜査の研究を継続した。わが国では、取り調べの可視化がホットイシューとなっているが、その際のいわば条件的な検討対象として、おとち捜査などの身分秘匿捜査の導入・実施が挙げられている。この点に関しては、必ずしもリンクする議論とは思われないが、諸外国では、積極的実施と可視化とが関連付けられることも少なくない。また、こうしたニーズとは別に、組織犯罪による犯罪手口の巧妙さ、秘匿性などに伴い、犯罪の摘発が困難となる事案があることも事実である。そこで、わが国の可視化の議論状況の推移を見守りつつ、組織犯罪対策に加え、通常め捜査方法では、摘発が困難な犯罪類型に対して、身分秘匿捜査が積極的に活用されている米国の研究を行った。米国では、身分秘匿捜査については、司法長官の指針があり、不適正事案の発生を抑制しようと試みているが、そのこと自体、わが国が何らの指針もなく実施されていることへの有益な示唆となる。また、身分秘匿捜査のうち、激しい議論が展開されているのは、そこでの手法が罠に至った場合のおとり捜査である。米国は、身分秘匿捜査で用いられる一手法として、おとり捜査を捉えているが、そこで主張されている罠の抗弁はわが国のおとり捜査に影響を与えたことは周知の事実である。すなわち、犯意誘発型のおとり捜査は違法、機会提供型は適法とする判断基準である。わが国では、近時、こうした判断基準への疑問が有力に主張されているが、米国の罠の理論を前提にする限り、犯意の有無は、有罪・無罪のメルクマールであったのであり、この点に関しては、果たして、当を得た批判といえるか、疑問がないではない。また、そのことに理由があるとすれば、捜査の適否の判断基準にいかなる要素として組み込むことが可能かの検討が必要となる。こうした枠組みにより、22年度の研究助成の成果を23年度は順次公刊予定にしている。
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Research Products
(1 results)