2011 Fiscal Year Annual Research Report
旧商法下における証券市場法制の現代的意義に関する基礎研究
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21730077
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
西川 義晃 静岡大学, 人文学部, 准教授 (00366923)
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Keywords | 証券市場 / 資本市場 / 証券取引法 / 金融商品取引法 / 金融法 / 株式会社法 / 取引所法 / 戦前会社法 |
Research Abstract |
今年度に行った研究は、大別すると以下の三つの方向性に分けられる。第一に、戦前の証券市場法制を構成していた各種業法の立法目的、解釈上の争点、裁判例の分析である。戦前においては取引所法のほか、有価証券割賦販売業法、有価証券業取締法、有価証券引受業法などの業法が存在し、取引所内外における証券取引の規制を担っていた。このうち、まず、有価証券業取締法は取引所の取引員ではない業者による、上場されていない株式の売買が規制の対象であったことから、同法の制定過程での議論を整理することにより、戦前において取引所外に存在した証券市場の実態の把握にも努めた。次に、有価証券引受業法では「募集」が重要な概念であった。戦前における社債の発行は有価証券引受業法のほか商法(第2編会社)が、株式の発行は商法が主にその規制を担っていた。現行法とは異なる戦前の諸制度が背景にあるものの、募集の意義に関して、例えば株式会社の設立では、株主の募集が公募によらない場合、発起人の会祉に対する責任が生じるとする下級審裁判例が存在するなど、「募集」は公募であるという理解が一般的であったように思われる。募集を公募とみる法体系は、戦前において証券市場の存在を前提とした理論体系が存在していたことを意味し、現行法に大きな示唆があるように思われる。第二に、戦前の取引所の組織について、株式会社と会員制のいずれが望ましいかという議論が長らく続いており、株式会社の営利性が取引所にふさわしいか否かという問題意識が中心であることを確認した。もっとも戦前においては先物取引が中心であり、取引所の役割も現在とは異なることに留意が必要である。第三に、現行の金融商品取引法の研究である。今年度は特に、金融商品取引法の立法過程と、そこで論じられた資本市場の機能の重視について整理した。この成果については、来年度、共著書として刊行・公表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の十分な公表には至っていないものの、調査・研究は順調に進んでいること、今年度中には研究成果を公表できる見通しであることが挙げられる。すなわち、(1)旧商法下における証券取引の実態研究および証券取引規制の評価の視点の確立、(2)旧商法下における市場阻害行為ないし不公正零引規制については文章化が進んでいる。(1)旧商法下における証券業者規制、(4)旧商法下における株式会社取引所に対する法規制についても、調査・研究が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
現状は研究成果の早期の公表に向けて、成果の文章化に努めるとともに、調査・研究活動を継続しているところである。 こうした状況を今後さらに推進するために、出席予定の研究会において研究報告をし、他の商事法研究者と意見交換をすることで、研究成果の完成度を高める。そのために来年度配分予定の科学研究費補助金の使用内訳において、国内旅費の配分を高めることとする。また、従来収集してきた資料の分析を進めるとともに、さらなる資料も収集することにより、研究成果の一層の充実を図る。
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