Research Abstract |
「官僚制の効率性と民主性」といった古典的テーマに対し,(1)分析手法として,ゲーム理論と計量分析を導入しつつ,(2)分析視角として,選挙・投票行動研究との融合を図ることにより,経験的なデータに基づきながら両者の関係を解明し新たな知見を得ることが,この研究の目的である.初年度に当たる平成21年度には,先行研究の検討,理論モデルの仮構築,計量分析のデータセットの予備的収集を行うことを予定した. 本年度に得られた成果としては,まず,選挙制度と政治腐敗の関係について,計量分析による各国比較を通じて解明を試みた.その成果の一部は,日本政治学会において報告した.そこでは,政治家の行動を規定する選挙制度のあり方が,その国の政治腐敗を左右すると同時に,官僚制の質もまた,政治腐敗の程度に影響を与えていることを,統計的に明らかにした.政治腐敗指数を用いた各国比較の研究は,欧米では盛んに行われているが,日本ではこれまで行われてこなかった.さらに,選挙制度と官僚制の質の双方を包括的に独立変数に用いた実証研究はまだみられず,早期の公開を行いたいと考えている. 他方,今年度に雑誌に公開した二つの成果は,研究の中間生産物ないし派生物の性格が強いものである.一つは,この研究に関する重要な先行研究の一つについて,書評を依頼されたので執筆を行ったものである.もう一つは,研究代表者の過去の研究を素材として行われた座談会であるが,そこでの検討は本研究の問題関心を敷衍したものとなっている.
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