2009 Fiscal Year Annual Research Report
対外経済政策に着目した、イギリス「コンセンサス」政治概念の再検討
Project/Area Number |
21730130
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
池本 大輔 Kansai Gaidai University, 国際言語学部, 講師 (40510722)
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Keywords | イギリス / 対外経済政策 / コンセンサス政治 / マーガレット・サッチャー / 国際資本移動 / 欧州通貨統合 |
Research Abstract |
本研究は国際通貨制度や国際資本移動への態度に代表される「対外経済政策」に着目することで、通説的イギリス政治像にとってかわる新しい解釈を提示しようとするものである。この解釈によれば1970年代のヒース政権やキャラハン政権は通説がいうような過渡期ではなく、「戦後コンセンサス」とも「ネオリベラル・コンセンサス」とも異なる独自の政策を実行した時期であったと位置付けられる。サッチャー政権の革新性は、両政権との対比によってはじめて明らかになる。 本年度の主な研究成果は以下のとおりである。まずイギリス・ロンドンに8月19日から9月9日まで滞在し、当地のナショナル・アーカイブで資料収集に従事した。収集した資料はヒース政権(1970年~1974年)・キャラハン政権(1976~1979年)期の経済政策に関連する内閣文書・内閣委員会文書・首相府文書であり、重要なものはデジタル・カメラで撮影して保存した。20日間の滞在期間中に収集した資料の分量は合計で約14,000ページにのぼる。その後はこれらの資料の読解を通じて、政権ごとの経済戦略や経常収支赤字への対処の仕方に関する政府内部の議論の再構成にあたった。このような作業の結果として、キャラハン政権を輸出主導の経済成長をつうじてイギリス経済の懸案であった対外収支赤字を解消することを目指し、そのために地域的な通貨統合の枠組みへの参加に積極的な姿勢を見せた政権として位置づけることが可能になった。なおこれらの研究成果を英語の本として出版する準備が現在進行中であり、来年度中に英国マクミラン社から出版される予定となっている。
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