2010 Fiscal Year Annual Research Report
対外経済政策に着目した、イギリス「コンセンサス」政治概念の再検討
Project/Area Number |
21730130
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
池本 大輔 明治学院大学, 法学部, 准教授 (40510722)
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Research Abstract |
イギリス政治研究においては、戦後政治をケインズ主義にもとづく「戦後コンセンサス」の時代とマネタリズムにもとづく「ネオリベラル・コンセンサス」の時代とに区分し、サッチャー政権を前者から後者への変化をもたらした政権として位置づける解釈が一般的である。本研究は、国際通貨制度や国際資本移動への態度に代表される「対外経済政策」に着目することで、上記のような通説的イギリス政治像にとってかわる新しい解釈を提示しようとするものである。この解釈によれば、1970年代のヒース政権やキャラハン政権は通説がいうような過渡期ではなく、「戦後コンセンサス」とも「ネオリベラル・コンセンサス」とも異なる独自の政策を実行した時期であったと位置付けられる。サッチャー政権の革新性は、両政権との対比によってはじめて明らかになる。 本年度は、昨年度に引き続き、イギリス・ナショナル・アーカイブなどで資料収集に努める一方、収集した資料の読解、整理にあたった。このうち、大陸ヨーロッパ諸国との協調、国際的な通貨安定、製造業の競争力強化を目指したヒース・キャラハン両政権期に関する研究成果が、2011年半ばに英国マクミラン社から単著として出版される予定である。サッチャー政権期はこれとは対照的にアメリカとの関係、国際的資本移動の自由、金融業の重視によって特徴づけられるが、イギリスの政府文書の公開はいわゆる「三十年ルール」にもとづいているため、同政権については公開が始まったばかりであり、さらに継続的な研究が必要である。
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