2010 Fiscal Year Annual Research Report
中国歴史教育に関する実証的研究―1949年以降の教科書の歴史観・外国観を徹底分析
Project/Area Number |
21730149
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王 雪萍 東京大学, 教養学部, 講師 (10439234)
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Keywords | 中国 / 国際関係 / 歴史教育 / 日本 / 日中関係 / 歴史認識 / 愛国主義教育 / 教科書 |
Research Abstract |
本研究の目的は、一般人民向けの愛国主義普及キャンペーンではなく、中国政府は児童や生徒たちにどのような歴史観と外国観を伝えたいのかということについて分析することである。21年度では、小中高等学校の「教学大綱」(日本の学習指導要領に相当する)に対する調査、分析を中心に行い、中国政府が歴史教育を通じて生徒に伝えたい歴史観、外国観を明らかにした。22年度では、人民教育出版社と上海市の華東師範大学出版社、上海師範大学出版社によって出版された歴史教科書の収集と、その内容、字数データ分析を中心に行った。特に、歴史教科書の中の日本関連記述の分析を重点的に行った。 その結論は以下の通りである。国内外の政治情勢に影響されて中国の歴史教育における日本や近代における日中両国の衝突の歴史に関する記述は変化してきた。文革前の一時期を除けば、中国建国後から1986年まで、歴史教育における日中戦争時の日本の侵略行為に対する批判姿勢はあまり強調されなかった。しかし、1988年以降、特に1990年代以降は、日本の具体的な侵略行為や、占領地の統治活動についても詳細に説明されるようになった。それは、日本に対する批判と読み取ることも可能である。とはいえ、教科書における日本記述、近代における日中衝突、抗日戦争に関する記述の字数の割合の下降傾向を勘案すると、侵略行為を詳細に説明した記述は日本のみに対して打ち出された方針ではなく、1840年以降の100年余りの苦難の時期に、中国を侵略、圧迫した帝国主義列強全体に対する記述方針であったことも留意しておかなくてはならない。また日本関連記述の変化は、日中関係の変化の時期とは一致していないことから、中国の歴史教育の変化は、中国の対米ソ関係と国内問題に影響されることが多く、個別の国との関係にはさほど影響されていないことがわかった。
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