2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730154
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
楡井 誠 一橋大学, イノベーション研究センター, 准教授 (60530079)
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Keywords | 投資循環 / 景気循環 / 内生的振動 / 非線形力学 / 動力学的一般均衡 / 戦略的補完性 / 投資の不可分性 / 資産分布 |
Research Abstract |
22年度は、21年度に構築した内生的景気循環を示す動学一般均衡のベンチマークモデルに、投資のtime-to-build仮説を導入して、景気循環の動的波及を定量的に再現するモデルに発展させることを目指した。モデルの数値的な解析は、Journal of Economic Dynamics and Control 2009年夏の特別号に特集された新しい数値計算手法、とりわけその中のMichael Reiterによる手法を利用した。しかし、21年度に構築したモデルEndogenous Fluctuations of Investment and Output in a Model of Discrete Capital Adjustments"にtime-to-buildを導入すると、当該モデルに利用されるパラメターのカリブレーション値によっては、動学経路がindeterminateになるケースが多いことが分かった。また、このカリブレーション値については、この論文を投稿したJournal of Economic Dynamics and Controlの査読者からも批判を受けた。そこで、22年度後半ではモデルの生産者面を及び労働市場の設定を大幅に変更し、妥当なパラメター値のもとで内生的な景気循環が生じるようにした。この計算的な実装は完了し、望ましい成果を得た。同時平行的に、Fortranプログラミングを学習し、高速に数値計算を実装できるようにした。新しいモデルにtime-to-buildを再導入する試みは23年度に持ち越された。一方で、この研究における内生的投資振動メカニズムの直接的な実証として、企業データによる大規模設備投資の雪だるま式波及効果の推定についての論文を完成させた("Detecting Propagation Effects by Observing Aggregate Fluctuations" with Chaoqun Lai)。また、副次的な成果として、生産活動に個別的生産性リスクがあるときの動学的一般均衡の一特徴付けとして、企業家の所得資産分布の裾がパレート分布になり現実をうまく説明できることが分かった。この成果はワーキングペーパー"Pareto distributions in economic growth"として結実し、National Bureau of Economic Researchのサマーインスティチュートで発表されることによって国際的な認知を得た。
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Research Products
(4 results)