2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730195
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
岡村 和明 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 准教授 (70325398)
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Keywords | 労働供給 / 状態依存性 / 動学的パネル・データ |
Research Abstract |
動学的パネル・データ分析手法の一つである動学的ミックスド・多変量ロジットモデルの枠組みの下、ランダムなショックにおける系列相関を明示的に考慮した推定モデルに基づいて、日本の既婚女性の動学的多変量(正規労働、非正規労働、非労働力)労働供給行動の分析を行った。その結果、正規労働、非正規労働における状態依存性の存在が確認された。本研究の最終成果は、国内外の学会、コンファレンス、研究会での報告および、海外の学術雑誌への投稿を通じた多くの専門家からのコメントを反映しており、その点で信頼度の高い成果であるといえる。同じデータ・セットを用いた一変量労働供給行動に関する先行研究では、就業選択における状態依存性の存在は確認されず、ランダム・ショックにおける系列相関が既婚女性の労働供給行動に強い影響を及ぼしていることが確認されている。本研究が明らかにしたような、動学的多変量分析の枠組みで就業選択における状態依存性が存在するという結果は、女性の労働市場における就業機会の二重構造の存在を示唆している。つまり、過去に正規労働に従事した女性は非労働力状態を経験した女性に比べて今期も正規労働に従事する傾向にあり、また非正規労働に従事する労働者も同様、非正規労働の経験がその後の非正規雇用就業確率を高める。この結果から得られる政策的インプリケーションは、非労働力の状態にある女性にとってある特定期間の"就業経験"が当人の長期的な就業機会を高める、という点にある。この結果は、例えば正規労働に従事している既婚女性が出産で仕事を一度辞めてしまうことの経済的損失の大きさを意味しており、その点で育児休業を含む各種家族政策の有効性を支持する結果といえる。
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