2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730235
|
Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
|
Keywords | 金融機関 / 資本注入 / 金融危機 / 合併 |
Research Abstract |
2007年の世界金融危機でアメリカを含む多くの国が行った政策は、1990年代後半の金融危機で日本が行った政策と幾つもの共通点がある。本研究の目的は日本の金融危機の経験から欧米が学べることは何かを明らかにすることである。主な政策のうち銀行の合併と公的資本注入を分析した。 まずアメリカは資本注入の前に合併促進を通して経営が悪化した銀行を救済しようとした。そこで本研究も1990年代後半から加速している日本の銀行合併の効果の分析から始めた。定量分析の結果、合併はコスト削減には効果があるものの、全体的にみると収入を引き下げることが分かった。コスト削減は規模の経済や商品の多様化などからきているようだった。日本と同様大手行が「メガバンク」に収束したアメリカでの合併も同様の効果を持つと考えられる。 次にアメリカの公的資本注入を日本の過去の研究と照らし合わせつつ分析した。過去の研究のうちMontgomery and Shimizutani (2009)は(1)素早い実施(2)十分な規模(3)それぞれの銀行の資本査定、の重要性を指摘している。アメリカは約1カ月で資本注入を行い実施は早かった。しかし準備された金額はGDP比で日本の約70%弱と少なく、また主要銀行に対し一律に資本を注入した。 定量分析を行った結果、アメリカでの資本注入の効果は予想通り限定的であった。銀行の自己資本比率の増加には一定の効果があったものの、不良債権の処理には効果がなく、貸出は逆に減少した。 アメリカは2009年にも資本注入を行っている。2008年と違い規模も大きく、銀行の資産査定を実施したうえで行っているため、日本の経験に照らし合わせると大きな効果を期待できる。
|