2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730238
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
横井 和彦 同志社大学, 経済学部, 准教授 (80351279)
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Keywords | 国有企業改革 / 単位 / 社区 / 社会保障 / 社会主義市場経済 / 和諧社会 |
Research Abstract |
本年度はまず、中国における国有企業改革の実態と、そのなかで労働者の働き方がどのように変化してきたかを検討した。その結果、中国経済の実態は、国有企業改革、とくに国有経済の戦略的調整によって依然として公有制が主体であり、国有企業の株式会社化も、私有化・民営化による効率化のためでも体制転換のためでもなく、資金調達のために行われていることが明らかとなった。そして国有企業の経営効率化の過程で、あるいは整理・淘汰の過程で多数の労働者が職場を追われ、さらに「国進民退」(国有企業は発展し、民営企業は衰退している)といわれる状況下で所得格差も拡大したことも明らかにした。 これに加えて、2008年施行の「労働契約法」においてはじめて規定された中国の派遣労働を、日本の「労働者派遣法」の由来・変遷と比較しながら検討することをつうじて中国における労働者の位置づけについて考察した。その結果、派遣労働の位置づけは日中両国においてほぼ違いはないが、それを規定する法規のねらいは、まったく正反対であることが明らかとなった。すなわち日本では企業経営者の立場に立って、雇用の多様化をつうじて人件費を削減することをめざしたものであるのに対して、中国では労働者の利益が守られていない現状のなか、労働者の利益を少しでも守ることをつうじて社会の安定をめざすための一つの方法として派遣労働を規定しているのである。 さらに、中国を代表する大型国有企業(家電メーカー)における労働者への分配(賃金・諸手当・賃金外手当、福利厚生、住宅)の実態を調査・検討することをつうじて、中国企業が、労働者やその家族の生活を保障する「単位」から、企業へと変化していることを明らかにした。とくに、福利厚生費用、とりわけ法定福利費用の高さから、政府による社会保障の制度化が進んでいることが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)